フランスにおいては、「フランス革命」のトラウマとロマン派の黎明期とが重なった時代にどのようにして「ナショナル」な歴史を形成するためにアートが使われたかというテーマがおもしろい。「普遍主義」の夢がボロボロになった時点であらたなナショナリズムを育てるにふさわしい「過去」や「伝統」は果たして存在するのか。
ヨーロッパの他の国についても、オーストリアとボヘミア、ハンガリー、ポーランドなどいろいろ微妙な版図が動く時代のナショナリズムは、過去の歴史的な「事件」をどう切り取って描くかという政治的なアートに反映させられた。
16世紀に遡るメアリー・スチュアートの処刑のようなテーマも、フランス、イングランド、スコットランド、ハプスブルク家のスペインなどが入り組む「歴史」のシンボルとして劇的な絵柄だった。