アメリカのモルモン教の本拠地ユタ州のユタ大学で、2014年に始まった「Religious Brain Project」というのがあって、宗教体験を脳科学で研究している。そこで若いモルモン信徒で神性とのつながりと祈りとを中心に信仰生活を送っている19 人を対象に、モルモン経や指導者の説教を聞かせたりした時の能をMRIで調べた。霊的に強い感情によって活性化する脳の部分はドラッグやセックスによるものと同じ報酬系システムだったそうだ。つまり信仰生活は「歓び」を生む。
彼らは他の宗教の信仰者についても同じ実験をして確認したいと言っているそうだ。
私は『大人のためのスピリチュアル「超」入門』という本の終章「科学と神秘主義 - 宗教と神秘体験」で、同じアメリカのペンシルヴァニア大学による宗教体験中の脳の血流分析についての話を書いた。その時の対象は瞑想状態に入った仏教徒と、深い祈りに入ったフランシスコ会修道女だった。脳の時間と空間を認識する場所、自己と非自己を区別する場所が活動停止し、情緒を司る場所だけが活発に作動していたという。この結果は2001年に『神経神学』という本になった。(これをめぐってのいろいろな見解もあるのだけれど、私のこの本を持っている方はもう一度見てください。)
で、今回のモルモン教。
アメリカってこういう宗教アプローチが好きな国だなあ、とあらためて思う。
でも今度は、報酬系とかアディクションの問題。
つまり宗教行為や体験には依存性があるという話だ。
この研究を紹介する記事はたいてい、だから
「宗教のオーバードーズには気をつけよう、でも、依存症になっても、いまのところ体に悪いという結果は出ていない」
という調子で結ばれる。
うーん、イスラム過激派やカルト宗教による洗脳などはどうなのだろう。
アディクションが「利用」される場合、「善用」されるか「悪用」されるかが問題だし、「脳内」の研究だけではあまり意味がないともおもうのだけれど。