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L'art de croire             竹下節子ブログ

ヨーロッパ議会選挙

5/26EU議員選挙だった。

5年に1度の選挙で、「個人」を選ぶのでなく、各政党の得票のパーセンテージに応じて議員数が決まる。フランスの割り当ては79議席で、大体パーセンテージと連動する。今回ならマリーヌ・ル・ペンの極右RNがパーセンテージでは最多で次のマクロンの前進党LEMと中道左派の連合与党MODEMが2位だけれど、どちらも23議席、次の緑の党が躍進して13議席、サルコジやシラクのいた保守の共和党LRが8議席と振るわず、父親の代からの知名度の高いラファエル・グリュックスマンを擁した社会党がエコロジーを前面に打ち出してなんとか6議席ほどで、極左と拮抗し、昔ながらの共産党は一議席もとれなかった。(この記事を書いている時点ではまだ最終的な数字が出ていないので注意。)

フランスのヨーロッパ議会レベルで極右(というより今はネオ・スヴリニスト、つまり新主権主義というそうだが)が最多票を獲得したのは二度目となる。

今のヨーロッパはポーランド、イタリア、オーストリア、ハンガリーなど、反移民、反EUで各国の国境や主権を取り戻そうという右派勢力が強い。トランプ大統領の元首席戦略官であるアメリカの経済ナショナリスト、スティーヴン・バノンまで応援に駆け付ける始末だった(バノンがアイルランド系カトリックであることも興味深い、フランスの極右ル・ペンや、先に上げた四ヶ国の保守派はカトリックつながりがある。)まだBREXITを果たしていないイギリスではBREXIT強硬派が強かった。

せっかくのEUなのに、EU支配反発派が票を伸ばしていくのは一見矛盾している。

EU内でEUの主権を縮小していこうということだろうけれど。

でも黄色いベスト運動で激しく糾弾されたマクロン党がいちおうの支持を受けたのはリベラリズムの強さを示している。黄色いベストも候補を出していたけれどストラクチャーがないのでサプライズは起きえなかった。(サプライズは事前調査でぱっとしなかった緑の党だ。)

(私の住んでいる町ではトップがマクロン党、次がル・ペン、次が緑の党だった。いずれも僅差。)

(カトリック率が一番多いと思われるパリ七区ではマクロン党46,53% 、カトリックのベラミを候補代表にたてた保守が21,74%、 緑の党が 10,57% 、ル・ペン党(政治家パフォーマンスの才能が突出している23歳の若者が候補代表)が7,46%だった)


EUの今の人気のなさと弱さについて、先日、あるポルトガル人作家ジャーナリスト(ホセ・ロドリゲス・ドス・サントス)が面白いことを言っていた。


我々は「ヨーロッパ」を創ったが「ヨーロッパ人」を創らなかったからだ、


と表現したのだ。


どういうことかというと、たとえば、サッカーのワールド・カップで「ドイツ対ブラジル」の対戦であったら、ポルトガル人は100%ブラジルを応援する、というのだ。このことは、ポルトガル人移民の多いフランスにいてもよく分かる。なるほど、ドイツは同じEUのヨーロッパ仲間ではあるが、ポルトガル人にはドイツ「人」と同じヨーロッパ「人」だという意識などない。

ポルトガルは世界最初の植民地帝国主義の国だ。最後でもある(モザンビークやアンゴラの独立は1975年)。で、ポルトガル語はフランス語やドイツ語を合わせたよりも多く使われているのだそうだ(チェックすると、モザンビークではマジョリティではない。やはり世界第五位の人口のブラジルの存在だろう)。

「過去の大国」という誇りがあるというより、過去に大国だったことを今のポルトガル人自体が「驚いている」のだそうだ。確かにフランスなどではポルトガル移民や出稼ぎ者が建物の管理人や家政婦、運転手などのセクターを支配?していて、イメージとしては「二級ヨーロッパ人」という立ち位置を彼らは認めている感じではある。(もちろんフランスは教育社会主義的な国だから、ポルトガル系のエリートも少なくない。)後発の貿易大国となったオランダ人などとは外見もかなり違う。北アフリカや中東に似た「地中海系」という感じもある。

けれども、オランダと違ってカトリックを新大陸に広めた、というのが誇りで、ポルトガルなしには今の世界宗教としてのカトリックはなかった、というのだ。多分そうなんだろう。


それにしても、EUの中でそれぞれの「主権国」が権利を主張しすぎると、その裏では、その「主権国」内のでの全体主義が進むリスクがある。本当の統合と普遍主義につながる多様性獲得のためにはやはり「共同体」の境界を超える多様性が必要なのだ。

今の日本では主として優秀なスポーツ選手を通していわゆる「ハーフ」の若者にスポットが当たっている。見た目すら区別のつかない在日東アジア人と日本人女性の子供に国籍を与えなかった旧国籍法(1980年代にさすがに違憲とされた)の頃と比べれば隔世の感はある。

沖縄には玉城デニー知事もいる。日本の中で分断を作っていろいろな負担の押し付け合いをしている場合ではない。


by mariastella | 2019-05-28 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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