ルノー・ピアルーRenaud Piarrouxの話をラジオで聞いて、「すごい、ヒーローだ」、と思った。(すぐにネットで検索して、腹の出たおじさんの姿を見てちょっとがっかりした自分にもがっかりしたが)
彼は小児科医でもあり熱帯疫学の専門家だ。
すでに数々の業績があるので、2010年にハイチのフランス大使館から呼ばれた。
その年1月の大地震の後、9月になって、ハイチでは前代未聞のコレラが蔓延したからだ。
何千人もの死者が出た。
それを食い止める方法を求められて呼ばれたのだ。
けれど、彼は、そのハイチ史上はじめてのコレラの元を突き止めることに関心を持った。
「原因調査よりも命を救うことが緊急」と言われるが、医療や看護をするチームと調査する人は別に行動できる。
で、コレラ菌をもたらしたものが地震後に現地に派遣された国連軍(米軍中心)のトイレの不衛生な処置であることが判明した。
監視カメラに映った証拠写真まであったので、国連の事務局長は一応謝罪したけれど、犠牲者を出した真の理由は天候のせいだといいくるめた。
ルノー・ピアルーの調査は、国連からも、その保健機構であるWHOからも妨害、拒否された。
けれども、ピアルーはあきらめず、ネパールでの国連軍から検出されたコレラ菌との比較などを通して、レポートを発表し、2016年になってようやく陽の目を見ることになった。
すでに最貧国レベルの上に地震の被害を受けたハイチ、そんなところでコレラが蔓延しても不思議がない、といわんばかりの傲慢な権威機関に対して一歩も譲らず、「不都合な真実」を忍耐強く明らかにしていった。
彼がいなければ、今も、国連軍が派遣される「途上国」で被害が続いていたかもしれない。
また、これまでに、彼のようなヒーローがいない時に、強者による被害を受けてきた無数の場所があったかもしれないことを思うと、戦慄する。