太郎とマクロン その1これを書いているのは7/22だ。 参院選が終わってフランスのニュースでも投票率の低さが言及されていた。 選挙運動中に、れいわ新選組の街頭演説のフィーバーをネットで見ていた時、2017年の大統領選でマクロンが無所属で突然運動を立ち上げた時のミーティングを思い出した。 カルトさながらの熱狂を見ながら、まさか、が本当になったのだ。 ただしマクロンはすでに現役の財務大臣だった傍らにその運動を開始して、その後、辞任して社会党からも離れる形で運動を広げていったので、選挙直前にやっと候補者を揃えたいわ新撰組」には時間がないだろう、衆議院選挙に向けてやっていくしかないだろうなとも思った。 それに、マクロン・フィーバーが何度も映されたのはテレビを通してのことで、マスコミから無視されてネットに頼った山本太郎とは違う。 もちろん直接選挙の大統領選と日本の政権奪取のシステムも違う。 似ているのは二人の若さと演説のうまさだ。 右でも左でもない中道のプラットフォームを作って、既存政党に見切りをつける政治家を吸収して政権を取ろうという気概も似ている。 今回政党要件を満たしたれいわ新撰組に、野党や与党の政権批判派が集結できるかどうかは分からない。 高学歴でもともとロスチャイルドで働いていた自由主義ばりばりの経歴のあるマクロンと、母子家庭で高校留年でタレントなど様々な職業を転々としてきたという山本太郎をある種のポピュリズムで結びつけるのも難しいだろう。 けれども、マクロンも、草の根運動をしていた頃は、右にも左にも、金持ちにも庶民にも等しく手を差し伸べると宣言して人気を博していた。だからこそ、まず「金持ちの優遇」から始めたマクロンに裏切られたと感じた「黄色いヴェスト」運動があれほど盛り上がったのだ。マクロンと黄色いヴェストはほとんど同床異夢の関係だ。 今回のれいわ新選組の選挙戦略で歴史に残るのは何といっても特別枠を使って二人の重度障碍者を国会に送り込んだことと、東京区に沖縄の創価学会員を送り込んで、婦人部の会員による胸に迫る告発などを広く耳にする形にしたことだ。 こんなまさにイノベーションとも呼べる「奇策」を思いついたのはすごい。自分で考えついたのか、それともひょっとして小沢一郎が別れる前にアドバイスしたのだろうか、などと思ってしまう。 自分で言葉を発することもできないALSの患者を国会に送る、というのは例えばトランプ型のポピュリズムでは逆立ちしても発想できない。 私の知人はパリのALS支援協会の世話をしていた。親しかった友人はリタイア後に奔馬性ALSを発症して4ヶ月で呼吸器設置を拒否して亡くなった(診断がついてから4ヶ月ということで、それまでは不調の理由が分からずいろいろ検査や対症療法をしていた)。 日本の友人にもご家族をALSで亡くした方がいる。ALS型の身体障碍は人を実存的な不安に陥れる。 できれば見たくない。 ポピュリズムとは逆のポジションにある。 今回の山本太郎がさまざまな「当事者」を前面に出してひとりひとり思いきり語らせた、というのは画期的だ。 「当事者」を可視化するというのは、偏見や差別に抗う最も有効な手段だと思う。 たとえば、この世界に、ALSのスティーヴン・ホーキング博士が存在していたことの意味はすごく大きかったとつくづく思う。 先日の記事で「自立」の二つの意味に触れて、身体機能の自立の他に、「意思決定能力」がある自立のことを書いたけれど、その意味で、新参議院議員となる舩後靖彦さんは優れて「自立」した方だ。 世間では、妊娠中の検査でトリソミー21などの遺伝的異常のある胎児の誕生を妨げる方向が普通になってきつつある。実際のトリソミー21によるハンディのある人やその周囲の人が最も恐れるのは、そうしていくうちに、そういうハンディの人の姿が社会から見えなくなることで、ハンディを乗り超えて生きている人への視線が変わり、生きづらさが増えるのではないかということだ。 ALSは、人生のどの時点でも発症する。染色体異常のような「事前の淘汰」は不可能だ。 山本太郎が言うように高齢化に伴って誰でも「寝たきり」になるかもしれない。身体機能の自立を失った人のアシストは成熟した社会の義務でもあるのだ。 れいわ新選組の開票会場のビデオでは、次は「知的障碍者」も当事者として立てたい、と言う発言があった。自閉症スペクトラム障害あたりが現実的なのだろうか、それとも、トリソミー21の当事者になるのだろうか。 れいわ新選組の言っていることには、他のポピュリズム政治家と共通する「不当さを訴える怒り」や、マクロンと共通する「ポジティヴな快適さ、威勢のよさ」の他に、障碍者を可視化する「居心地の悪さ」がつきまとう。 (ほとんど、難民キャンプの惨状を可視化するローマ法王みたいに不都合だ) 私はヨーロッパのポピュリズムとマクロンの登場と軌跡を観察しているので、「れいわ新選組」についていろいろ考えさせられるのだけれど、もう少し様子を見ることと、今、仕事が立て込み中なので、今回はこの辺で。(いつかその2を書きます)
by mariastella
| 2019-07-24 18:57
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