イラン情勢先日、イラン出身の元海軍士官とイラン情勢について話した。 トランプ大統領の「イラン沖警護有志連合」を牽制するプーチン大統領発表した「ペルシャ湾での集団安全保障構想」(国連安保理の決議に基づいた「反テロ連合」がペルシャ湾での平和維持活動を行うというもの)に希望が持てるかどうかを質問した。 すでに中国は賛成していて、イランやトルコもEUも加われば、トランプ主導の「有志連合」よりも戦争のリスクは少ない。 イランは戦争を望んでいない。 彼の弟が最近フランスに滞在したが、インフレはすごくて、飛行機代が数ヶ月で数倍に跳ね上がっている。多くのイラン人が困窮している。 一部の富裕層、つまり宗教のリーダーは、財産をすでにイランから移している。 最高指導者の家族が最近ロンドンである治療を受けたが、500人が同行した。 内政と外面がまったく違う。 内政的には、選挙の前だけ規制を弱めるふりをするが、議会が何を決定しようとも宗教の最高指導者の独断で何でもできてしまう。 イスラエルを敵対視するのはただただ、共通の敵の脅威によって国の団結を高めるから。 プーチンの提案はうまくいくかもしれない。 で、8/24から、フランスのビアリッツで、クリミア半島併合以来例によってロシアを仲間はずれにしたG7サミットが開催されるのだけれどマクロンはその直前の8/19に、ブレガンソンの大統領用別荘にプーチンを招待しての会談を予定している。それがどういう結果になるかは分からないけれど、マクロンのイニシアティヴは評価できる。 なるほど。 私は安倍首相のイラン訪問時の石油タンカー爆破事件の時に、それがアメリカの挑発だという意見はあり得なくはないと思った。アメリカは2003年のイラク侵攻で「大量破壊兵器がある」とフェイクを掲げたくらいだからだ。それにしても2003年以来激変したのは世界の様相だ。イラク派兵の時にドヴィルパンの有名な国連演説のように断固としてNOを貫いたフランスも、イランとの核合意を一方的に離脱したアメリカに対して強いことはもう言わなかった。核合意以来喜んでイランに進出したフランス企業も、アメリカとの取引を中止すると言われれば、引っ込まざるを得ないし、それは、軍隊を派遣するかどうかなどとは違って民間のレベルだからフランス政府も何も言えない。 実際は核合意の時点でもうイランには核武装の用意はあるということで、事実上の「抑止力」は維持しているのだから、核合意はすでに地政学的なネオ帝国主義とは別の「経済的」な合意だったとも言われている。 シーア派メシアニズムは、新たなメシアは強大な悪(アメリカ)との衝突の後で現れるというタイプの考えだから戦争も辞さないイメージだけれど、イランの若者たちの世俗化との間に大きな断絶がある。 でも、在仏イラン人の認識では、今の宗教指導者にはそういう宗教的信念や思い込みはなくて、あるのは権力と金を増やすか守るかの最適解の追求だけだという。 最近、イランで40年過ごしたフランス人のピエール・アンブロ神父の話を聞いた。 1933年生まれで、過活動気味の劣等生時代を経てアルジェリア戦争に派兵される。パトロール中にこちらに銃口を向けていると鉢合わせをしそうになり、突然実存的な疑問を抱く。神学生になり、モロッコを経由して、レバノンのイエズス会で7年学び1969年テヘランに赴任。アラブ諸国とは違って、イランはスーフィズムの影響でキリスト教の「三位一体」は躓きでなく解決でさえあることが分かった。神は慈しみより「愛」で一致した。で、なんと1979年のイスラム革命後もテヘランに残り、1984年にイラン国籍を取得したという。革命後に多くのキリスト教への改宗者が多くでた。国教会で説教を頼まれることも多くあった。 ある時、三人の子の母が神父を訪ね、難病で重篤な三番目の子のためにイエスに祈ると、劇的な回復をしたので、彼女は他の息子と夫も共に洗礼を受けた。 この話はシーア派当局の気に入らず、改宗の原因となった三番目の子の殺害命令が出たらしく、一家はトルコを経てスウェーデンに亡命した。アンブロ神父がスウェーデンにまで行って、三番目の子に洗礼を授けた。その時はまだイランに戻れた。ところが、2010年、テヘランのカルデア・カトリック司教がアンブロ神父に身の危険を伝えたのでフランスに戻る。 当初はパリ大司教に冷たくされて野宿までしたそうだけれど、その後は18区にあるイラクのカルデア派のセンターに行って、ペルシャ語母国語とする人々(イラン人とアフガニスタン人)の世話をすることになった。ペルシャ語聖書の他神学書や聖伝など300冊訳す。テヘランではすべて焼かれたけれど今はインタネットですべて公開をしている。ヨーロッパには35万人のペルシャ語母語の人がいる。神父が今住んでいるのはラスパーユのメゾン・マリーテレーズという高齢者施設で、テヘランで創設した「聖ヨハネセンター」の活動を、ヴ―チャルに続けている。 改宗者の多くは夢の中で十字架を見たことなどがきっかけだそうだ。 私は20年くらい前に、世界的に高名なイランの心臓外科医の息子とである医学生2人と知り合いだった。2人とも大きめの十字架を胸にぶら下げていたのを思い出す。 で、このアンブロ神父のことは、先日のイラン人ももちろん知っていて、シスター・クレールもこの神父を知っていたと言われた。シスター・クレールはこのブログにも何度か出てくる人だ。 アンブロ神父の話を聞いて、イスラム革命後のイランがカトリック神父に国籍をあたえて改宗者の世話をするのを許可していたなんて驚いたけれど、それは単に国際社会に向けたパフォーマンスだったのだと言われた。それでも、革命後30年も残っていたなんてすごい。 共産圏が経済的な破綻で崩壊したように、経済封鎖がイランのイスラム政権を倒すことになるのかどうかわからない。富裕層が生き延びる準備を着々しているのは確かだろう。でも、誰も戦争をしたいと思っていないとは言っても、戦争で確実に潤う軍事産業や国家再建の土建産業があるのだから、どうころぶか分からない。 私にとって、イランはいろいろな意味で「近い」国だ。これからどうなるのか、目が離せない。
by mariastella
| 2019-08-04 00:05
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