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L'art de croire             竹下節子ブログ

スーパーマンの霊性は?

前にスーパーマンの自立論について書いたことがある。

実はその少し後で、同じカトリックの文脈でもっと突拍子もないスーパーマンのインタビューを耳にして、もっと不可解になった。

アラン・ロベールという人で the french spiderman 、つまりフランスのスパイダーマンという異名の人だそうだ。どんな壁でも上ってしまう。手につける酢酸の袋だけもって。この人がパリのコンコルド広場のオベリスクに上った時の映像がこれ。1999/12/31のものだそうだ。

公共の歴史建造物だから、降りたらみんなに拍手される中ですぐに逮捕されている。前科ができた。


東京オリンピックでははじめてスポーツクライミングが挑戦する前種目に入るそうだ。クライマーが自身に繋がれたロープを支点にかけていくことで安全確保しながら登るのがリード・クライミングで、高さ12m以上の壁で、最大60手程度のコースを登るという。決まった時間でどこまで高く上ったかを競うのだろう。逆に15mの壁にどれだけ速く上るかを競うフリークライミングもあるそうだ。ロープを付けないボルダリングというのもあって、それは高さ45mの壁で床には厚さ30cmのマットが敷き詰めてられているそうだ。

で、もちろんアラン・ロベールは、命綱なしで高層ビルも上っていく。

おそらくスポンサーがついていて中継されるので、それが「仕事」なのだろうけれど、前に書いた冒険家や探検家というのとは違って、完全にその場限りのライブショーだ。

こういう人のモティヴェーションというのは私にはなかなか分からない。


それなのに興味を持ったのは、この人のインタビューが『自立を目指せ』というジャン=ルイ・エティエンヌと同じカトリック系の番組で流されたからだ。

「自立」はまあ分からないでもなかったけれど、危険のための危険みたいに見えるスパイダーマンはいったいどういう風に扱われるのだろう。それに興味を持った。


そしたら、最後に、「チャレンジの前には瞑想とかしますか ?」という質問があった。なるほど、 サッカーの選手だってスタジアムで十字を切る人もいるし、彼も神に祈っているかもしれないなあ。

すると、「メンタルは大切だけれど、瞑想とかは必要ない。子供の頃から勇気あるチャレンジャーになりたいと思っていた。」とあっさり答えていた。

「では、やはり、無事上り終えた時の達成感がモティヴェーションですか ?」とインタビュアー。


精神性なしで、勇気、チャレンジ、達成感、という三つの組み合わせなのかなあ。

すると、答えは、こうだった。


「いや、達成感はない。上っている最中はいつも死と隣り合わせだと自覚している。一瞬ごとにこれが生の最後の瞬間かもしれないと思う。いわば境界領域にある。だから、上り終えた時は、達成感でなくて『復活、再生』の歓びで、それがなにものにも代えがたい。」

だって。「達成感はない」という断言に驚いた。

このような「ボーン・アゲイン」を年5回くらい体験することが生き甲斐というか、やめられないようだ。

何という劇場型アディクションなのだろう。

まだ登山家や冒険家なら、最後の事故で行方不明、という終わり方もあり得るけれど、もう決して若くもない(57歳)この人が、ある日、手が滑ったり足を踏み外したり風に飛ばされたりして衆人環視のもとで落下したら、みんなが罪悪感を持つかもしれないしトラウマになるかもしれない。

ひょっとして彼のパフォーマンスを見ている人々も、「超能力」の見世物を見ているのではなくて、境界領域からの復活、再生のドラマに興奮しているのだろうか?

こういう人がこういう形で存在し、それを受け入れている社会の不思議に言葉もない。








by mariastella | 2019-08-14 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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