サン・シュルピス教会に入ったのは久しぶりだ。
『ダ・ヴィンチ・コード』の時はすっかり有名になってアメリカの観光ツアーなどが来ていた。子午線や天文時計がお目当てだった。
私はもう35年以上前に、解説ツアーに参加したことがあって、その時のことは今もよく覚えている。ドラクロワの絵にもちろん感激した。
聖母被昇天祭は、今は公現祭などと同じで日曜日のミサと合わせてやることになっているので、祭日にもかかわらず8/15に特別ミサをする教会は実は少ない。
でも、ノートルダム大聖堂は、そこで聖母にフランスを奉献したルイ一三世やそれを感謝するルイ一四世が像を造らせたものがあるのだから、被昇天祭がすごく大切なものになる。フランス革命後のナポレオンですら、8/15を自分の誕生日で聖ナポレオンの日として祭日にしたのでずっと残った。
サン・シュルピス教会はノートルダムのようなゴシック大建築とは違って宗教戦争後の建物で、17、18世紀の意匠だけれど、フランス革命で司祭たちが革命政府に忠誠を誓わされるのを断固拒否した教区司祭の勇気によって、教会の破壊や収奪を免れたという由緒がある。
1791年1月9日の劇的なシーンはこの説教壇上だった。
ミサの後に、バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿が完璧なフランス語でフォローしていた。すごく感じのいい人だった。
ノートルダムもそういえばここ数年は入ったことがなかった。テロ騒ぎ以来、パリの観光名所は避けていたからだ。(そしたら今日のサンシュルピスで怖がるな!というヨハネ=パウロ二世の言葉と顔を書いたプラカードを持っていた人がいた)
サン・シュルピスはノートルダムと違ってロマン派先取りっぽくエモーショナルだ。
聖歌などはラテン語。左にフランス語がある。カテドラルの疎開先だから、外国人の聖職者や信徒もたくさん来ているから「共通語」なんだろう。
オプティ師が最後にパリ大司教らしくパリのメイン守護聖人に祈った。聖女ジュヌヴィエーヴと聖ルイ王。
オプティ師は、最後に、ノートルダムの屋根が崩れ落ちても聖母像は立っていた、聖母は我々が立っているよう支えてくれる、と言った(あの時に聖母像も損壊していたらなんて言ったんだろう…)けれど、メインの説教ではノートルダム大聖堂のことには触れなかった。その代わりにこういうフレーズを真っ先に口にした。(続く)