香港で続いている中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例改正案」の撤回、中国寄りの行政長官の林鄭月娥(ラムチェン・ユッコ)(以下英語名キャリー・ラムで表示)の退陣を求めるデモや集会について考えていた。
その中で、ヨーロッパ系のカトリック司祭が自分の教会を、警察から逃げてくる学生たちに開放していた話を最近読んだ。香港の夏は蒸し暑い。彼らに、避難場所と、水と、携帯の充電とを提供するためだという。それを読んで過去の中南米での軍事政権に抵抗した時の「解放の神学」で人々と提携したカトリック教会のことを思い出した。(『神と金と革命が作った世界史(中央公論新社)』)
けれども、香港の補佐司教でフランシスコ会士のヨセフ・夏志誠は、その司祭にもう教会を開けるなと指示してきたそうだ。香港人の半数以上が、キリスト教系私学に一度は通っているそうで、政府の助成金も受けていて、そこに圧力が加えられているからだそうだ。キャリー・ラムもイタリア系修道会のミッション・スクール出身で熱心なカトリックである。
香港のキリスト教事情から政局を解説する記事(La Vie No3860)からピックアップして紹介していこう。
香港700万人の人口のうち、仏教・道教信徒が200万人、キリスト教信徒が90万人(カトリックはその半数で、同一首長を戴く最大宗派)なのだそうだ。10%を超えている。しかも、幕末や明治維新の日本がそうであったように、キリスト教は一応人種差別のない普遍宗教で世界とつながっているので、そこから共産党独裁の中国に対抗する「民主主義」を維持する力をくみ上げようとする人がたくさんいるので、大きな影響力を持っている。
どうしてキリスト教が根付いたかというと、もちろん英国支配の歴史のせいもあるけれど、1997年の返還以来、中国に渡ろうとする宣教会などがみな香港を拠点にしたからだ。また中国本土で迫害を受けたキリスト教の信徒や聖職者が逃げてこられる場所でもあった。(続く)