閑話挿入(旅行記はこの後続きます。)
9/3は、ナチスドイツがポーランドに侵攻して48時間後、英仏連合がドイツに宣戦布告してから80年記念ということで、Arteで貴重なドキュメンタリー番組があった。
「おかしな戦争」とシモーヌ・ド・ボーヴォワールが形容したように、宣戦布告後も実戦はほとんどなく、4ヶ月後の戦闘開始の後6週間戦っただけでフランスはあっさりとドイツの停戦条約を受け入れてしまった。
最初のあたりは、ドイツが英仏に、戦争は望んでいない、ポーランド占拠を認めてくれるなら平和条約を結ぼうなどと言っていた。英仏の仲を裂こうとして、いろいろなプロパガンダを展開した。フランスに対しては、イギリスは宿敵ではないか、ということで、イギリス軍によって火刑台に送られたジャンヌ・ダルクの絵、そしてイギリス軍によってセント・ヘレナ島へ島流しになったナポレオンの望郷の後ろ姿の絵がばら撒かれた。
20世紀末になっても、2度の大戦経験者が「フランスの伝統的な敵はイギリスだ、ドイツは本来仲間だった、」と語る人がよくいたものだけれど、ドイツのプロパガンダが効を奏したところもあるのかなあ、と思ってしまう。
ともかく、当時の映像で見るドイツ人のヒトラーへの熱狂はすごいし、独仏間の憎悪もはっきり感じ取られる。
これを見ると、本当に、戦後まもなく独仏が石炭鉄鋼同盟をEUへと育てて行ったことの偉大さが分かる。まさに奇跡だ。イギリスは招かれていなかったし、今もまた抜け出ようとしているのも興味深い。
それにつけても、背景が違うにしても、今の日韓関係がいまだに侵略戦争責任をめぐって対立していることの不毛さを思う。中国の共産革命と冷戦開始という事態はあったにしろ、台湾や朝鮮半島などと東アジア平和連合などがもしできていたらなあ、と夢想せずにはいられない。
このドキュメンタリーには胸の悪くなるような映像も満載なのだけれど、これを80年後の今、ドイツとフランスが共同製作しているということも羨ましい。
そもそもArteという独仏TV局が稼働してレベルの高い地上波番組を送り続けていること自体にいつも感心する。1986年にプロジェクトが1992年にスタートした。ネットでも視聴できる。
コンセプトは独仏ではなく、「ヨーロッパ」だ。
独仏はあらゆる意味で、もう絶対に戦わないだろう。
東アジアでもそういう確信が、欲しい。