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L'art de croire             竹下節子ブログ

フリーメイスン女性ロッジの講演会 その2

(前の記事の続きです)

さて、宝塚風のカップルやスタッフたちの間を建物の4回に上がって第4テンプルに。
学校の大きめの教室くらいの広さ。天井には多分修道院時代からの太い梁が張り巡らされている。扉から奥の檀上まで床の中央には黒白の市松状タイル。扉内側には JとB と書かれた2本の柱。そこからロープが両側に壁を伝って奥の壇上までつながっている。壇上とは垂直に、中央通路を挟んで向かい合う形で10脚ほどの固定された椅子が、3列ずつ。つまり、60席くらい。それに移動できる椅子も足されて、最終的には80人くらい入っただろうか。
椅子にはこのロッジの由来を書いたパンフレットや、感想を書くもの、連絡用のアドレスを欠くものなどがおいてある。
パンフレットはこういうもの。
フリーメイスン女性ロッジの講演会 その2_c0175451_21090293.jpeg
5901はメイスン暦で、このロッジが最初に創立されたのが1901年ということらしい。
右下の自由、平等、同胞愛と対になって、左下に特に女性を意識して、自由、寛容、政教分離、他者と自身へのリスペクト、と書いてある。
フリーメイスン女性ロッジの講演会 その2_c0175451_21092520.jpeg
最後のページはイニシエーションの説明で、精神の旅に絶対に必要な旅程だけれど口外してはいけない、とあるのが、いわゆる秘密結社っぽい。
フリーメイスン女性ロッジの講演会 その2_c0175451_21100367.jpeg
部屋の中はさすがに撮影禁止だけれど、一般的なロッジのテンプルと基本的には同じだ。
ずっと音楽が流れている。モーツアルトのシンフォニー。
柱の両側に第一門衛と第二門衛。2人とも黒服。
演壇奥左奥上には月と星。三日月には顔がある。右はやはり顔が描かれた太陽。
演壇中央には司会の黒人女性。彼女の許可がなければだれも話せない。
発言したい人は挙手して、「門衛」から司会者に告げられ、司会者が許可する。
誰かが話している時に遮ってはいけない。
メイスンの内輪の言葉やジェスチャーを使ってはならない、などと注意がある。

メイスンのメンバーと一般人との割合を言い当てるのは難しい。
スタッフたちと親しく話している人が多いからメンバーは少なくないとは思う。
女性と共に来た年配の男性が4、5人。単独の男性は1、2人、黒人女性は宝塚風の人を含めて数人。後は、5、60代の白人女性が中心という感じ。別のテーマの出席者にはアジア系の女性や移民風の人、黒人も結構いたようだ。私の出たのはアートがテーマだから少し違ったのかもしれない。それでも、二人の発表者と質疑応答の後に、この女性ロッジGLFFについての質疑応答の時間があるという。
スタッフは胸にタグをつけている。
演壇には、司会者、二人の発表者、後で要約する係の人、そしてマイスターがいる。
マイスターは、大柄な年配の短く刈り込んだ銀髪で宝塚風、長い黒い上着の両の襟に金のバッジ、光沢のある茶色の二重ラインの入った黒いズボン。
発表者の一人は前マイスター(3年任期)らしい。黒の服。もう一人は30-40くらいのブロンド女性。
彼女らははじめはぺちゃくちゃ話していたけれど、始まる前には、いったん外に出て、扉を閉め、音楽と共に入ってくる。参会者は起立する。
起立や着席の合図には木槌で机が叩かれる。

さて、第一発表は、「人間の進歩に寄与する普遍的ツールとしてのアート」。

全ての子どもはアーティストだ、問題はどうやってアーティストのままでいられるか、というピカソの言葉をまず引用。
アートは感覚と情動と知性に訴える。本質の中の「美」を求める。
同時にピカソの『ゲルニカ』のように時代の「証し」という役割もある。

この時に、「あいちトリエンナーレ」の表現の不自由展のことを考えた。
「美」といっても、お花畑だけが美ではない。「時代の証し」が、アーティストの希求するものを教えてくれることもある。

でも、その後は、アートが人を結びつける、連帯させる、ダイナミズムを生む、情動を解放するならアート、など、結構アート礼賛が続いた。

発表が終わっても拍手はなく、音楽のみ。音楽がすべてを進行させる。

で、気になったので、私は質疑応答の時に、プロパガンダとアートの関係について質問した。
ナチスの退廃美術展についても聞きたかった。
でも答えは中途半端だった。

質疑応答の中で語られたのは、アートの鑑賞にも、フリーメイスンのようにグレードがあって、好きか嫌いかというステージから、学んでいくうちに別の鑑賞の仕方に進化する、ということや、インスピレーションとの関係や、IT技術との関係などで、この時点では質問者は私以外全員が男性だった。美しくないけれど感動をもたらすという例としてフランシス・ベーコンが挙げられていた。
私は現代アートのマーケティングとの関係について少しコメントした。

「手」のシンボリズムでは、親指が神、人差し指がイエス、中指が聖霊、薬指が神性、小指が人間性、とか、いろいろ紹介されたけれど、私にとって、「手」の一番興味深かった講演は、2006/11/30のもので、幸いサイトに残っている。
この最初の記事。(今読み返してもとてもおもしろい)

そんなものと比べるのも意味がないけれど、目新しいものはない。
フリーメイスンでの手の使い方では、白い手袋の意味が語られた。手は清浄でなくてはならない。逆に、例会の最後に手袋を外してみんなで手をつないでチェーンをつくることが大切になる。手は心の薬、という珍しい表現があり、メイスンの例会中は足を組んではならず、両手は腿の上に置かなくてはならない、と紹介された時、出席者の何人かが組んでいた脚を元に戻した。私も脚を組んでいたのだけれど、すぐにあわてて外すのもかえって気が引けて、少し後でそっと少しずつ外した。

ここでも質疑応答があったけれど、私には「答」ばかりが浮かんだ。
『バロック音楽はなぜ癒すのか』(音楽之友社)で紹介したマリー・ジャエルのピアノ奏法とか、その他いろいろ、きっと発表者にも参考になるだろういろいろなことが浮かぶ。

誰かが、今の発表は主としてヨーロッパの話だったけれど、ヨーロッパ人が簡単に触れあうのに対してアジアでは相手に手を触れるのを避ける文化がある、と言った。
で、思わず、それに対してはコメントしてしまった。
対人関係における社会コードとして人に触れないことと、「手当」やら指圧などの文化が併存していることは別だし。でも、このことについて「比較文化」論を話し出すと、それこそ私が講演しなくてはならないから、ほんの少しだけ。
正直言って、何を言われても、それに関する膨大な別の事例がすぐ頭に浮かんでしまう。

でもあまり口を出さないようにがまんしていた。
私が何か新しいエレメントを提供すると、それは本当にここにいる人の役に立つのか、求められていることなのか分からない。

それぞれのテーマについてすでにいろいろ研究している人たちの集まる学会などではない。
考えたら、こういう、ある意味アカデミックに中途半端な、いわゆる専門家によるものではない「講演会」に参加するのは初めてかもしれない。

その真の目的は、最後の方で何となくわかってきた。(続く)

by mariastella | 2019-11-13 00:05 | フリーメイスン
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

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