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L'art de croire             竹下節子ブログ

フランスのストに思う その2 ジェローム・サント=マリー

フランス人の政治活動への考察の続き。

いろいろ考えていることはあるのだけれど、日本の情勢と含めて比較文化的考察をするのはもっと時間をかけることにして、まずは、フランスの状況を分析する二つの視点を簡単に紹介する。

最初はジェローム・サント=マリーという政治アナリストで世論調査分析者。

まあ「聖母マリア」という姓(多分先祖の出身の地名に関係すると思うけど)からして、伝統的なカトリック家庭の教育を受けた人だという気はする。

この人が、今のフランスは、フランス革命以来の右と左、保守と革新という左右のブロックではなくて、上と下のブロックに分かれていると言って、『Bloc contre bloc : La dynamique du Macronisme, éditions du Cerf, 2019』(ブロック対決 : マクロン主義のダイナミズム)という本を出した。

今年5月のヨーロッパ議会選挙では、ヤニック・ジャドの緑の党が13,47%と躍進した。極右ナショナリストのル・ペンのRN23,31%の勢いでどうなるかと心配したけれど、マクロンのLREMは黄色いベスト運動にかかわらず22,41%と面目を保った。で、シラク、サルコジ時代に与党だった共和党は、保守層の票を取り戻すために、カトリック色の強いベラミをトップに立てたけれど、なんと8,48%に終わった。共和党と共に二大政党の一翼だったミッテランやオランドの社会党はと言えば、別のエコロジー派と組んでまっとうなことを主張したのに6,19%で、大統領選で健闘した極左メランションが6,31%となっていた。

マクロンは社会党政権の経済相だったのに、社会党の中道派と共和党の中道派をまとめて離反して、「二大政党」制は崩れたのだった。

ヨーロッパ議会選挙の時に、保守派、ブルジョワ、カトリックの層がリベラルなマクロンを支持したことはフランスにおけるネオリベラルが根付いたことの証のようだった。

そのことをサント=マリーは、今のフランスを分断しているのは右と左ではなく、エリートと大衆の二つのブロックだと表現しているのだ。

そして、エリート・ブロックは三つに分かれるという。


まず、1%ほどのリアル・エリート。彼らが富や権力の大半を所有している。


次にaspirationnelと呼ばれるエリート。向上心型?

ここには実際の年収も高かったり高学歴だったりする人もいるけれど、まだ富の蓄積はなくても、スタートアップしたり、投資に励んだり、要するに、金が人生の成功度の基準だという価値観を共有して、競争社会に適応している多くの人が含まれる。


そして、最後が、par procurationのエリート。代位、代理によるとでも訳せようか。

その典型が、リタイア世代、そのうちの、生活に困らないだけの年金受給者だ。実際の選挙で投票する有権者の三分の一がこのカテゴリーなので、影響力は大きい。

そして、ひと昔前は、このカテゴリーは、カトリックで保守派だから、右派共和党に投票していた。

その「キリスト教的」センシビリティは新自由主義的なマクロンとは本来は相容れない。

けれども、彼らは、「大衆ブロック」の反撃を恐れている。だから、モラルや政治思想による選択ではなくて、「大衆ブロック」の抗議や実力行使を実際に制してくれる「現役の権力」に投票するわけだ。

「大衆ブロック」にも、もう右派も左派もない。極右と極左はほとんど同じマニフェストを掲げている。EU離脱とか主権回復とか底辺のフランス人ファーストだとかいうやつだ。

フランス第二の宗教と言われるイスラム教は今や800万人と言われているけれど、そのうち200万人はフランス国籍をもっていないし、未成年が多く、有権者の割合が他のグループより少ない上に投票率も高くない。本来、マイノリティは社会民主主義の受益者なのだから、マクロン政治に不満でも、極右には投票しない。etc.etc..

サント・マリーのブロック理論はこんな感じだ。

まあ、フランスには、聖職者も含めて、高学歴高職歴富裕家庭出身のエリート・カトリックもいて、特に「ヨハネ=パウロ世代」以降は、真福八端(マタイ5,1~10)などの「幸い」の価値観に戻り、弱者救済を実践し、そのためには権力と戦うこともいとわない人たちもある。思想的にフランス革命を用意した聖職者がいたのも同様だ。だから、ジャンル分けするのはいろいろと難しい。

で、別の分け方をする人もいる。(続く)


by mariastella | 2019-12-20 00:05 | フランス
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