クリストファー・ノーランの2006年の映画『プレステージ』を年末にArteで観た。
19世紀末のロンドンを舞台に二人のマジシャンがトリックを競い合うというストーリー。
この監督の作品らしく構成が凝っていて、分かりにくい。
ビクトリア時代の雰囲気など、フォトジェニックで楽しめるという部分もあるのだけれど、何しろトリックの重要な部分がSF仕立てなので、歴史映画っぽかった興がそがれる。
これは絶対に原作の小説の方がおもしろいだろうと確信する。
一番印象に残って気分が悪かったのは、小鳥を籠から消した後また取り出して見せるというトリックだ。実は舞台裏にはたくさんの鳥がいて、最初に見せる鳥は殺され、後から見せるのは別の鳥だというところだ。今こんなことをしたら「動物虐待」で訴えられそうだ。でも、その様子が何度も出てきて、それが大きな伏線にもなっている。
私がフランスのマジシャンの集まりに唯一参加したのは1998年の夏だった。彼らは食事をしながらも常に新しいトリックを考えていた。まず、テーブルにある何かを見ながら、これが突然こうなったらおもしろい、と「効果」の方を思いついて、その次に、それを可能にするトリックをいろいろと考えるのだ。その順番が新鮮だった。研究者の集まりみたいだった。
そのことを『夢見るオートマタ』(岩波書店)に書いたことがある。その縁もあって、Mr.マリックが監修するマジックの歴史のテレビ番組に少し関わることになった。
今回『プレステージ』の映画を観たので、日本語版予告編をコピーするために検索したら、2007年の日本公開当時の宣伝プロデューサーがMr.マリックだとあった。
彼のプロデュース力のすばらしさに今さらながら感心する。
人生は、イリュージョンと嘘の狭間を行くあやうい峰歩きなのかなあ、とも思う。