ナッツとチョコレートと修道院(これを書いたのは昨年末です。) クリスマスから大晦日にかけてのフランスでは、ナッツ類やドライフルーツを籠に詰めたセットがスーパーの食品コーナーにまでたくさん売りに出される。 「くるみ割り人形」のおかげで、日本にいる子供だった頃から、クリスマス・イヴとクルミの関係はなんとなく知っていたけれど、フランスに来てから実感してきた。 もとはプロヴァンス地方の「13デザート(イエス・キリストと12人の弟子?)」というものがあって、その中に「4人の物乞い」というのに由来するらしい。托鉢修道会をイメージしたものだ。 クルミやノワゼットはカルメル会、 干しイチジクはフランシスコ会、 アーモンドはドミニコ会、 干しブドウはアウグスティヌス会だそうだ。 キリスト教の行事と修道会と食べ物の関係が切っても切れないことは、フランスにいるとよくわかる。 自給自足型の修道院はさまざまな嗜好品を生産、販売もしている。 特に、「大航海時代」以来、「新大陸」からもたらされた多くの新しい食品や香辛料がヨーロッパの食生活を大きく変えた。 フランスでは年間の生産量の半分以上がクリスマスの時期とイースターの時期に購入されるというチョコレートはその代表で、キリスト教と関係が深い。 クリスマスやイースターという「お祭り」にみんながチョコレートを交換したり食べたりするからだと思われるけれど、もとは、クリスマスやイースターの前、四週間の待降節や40日のカレム(四旬節)という「断食」または「節食」の期間を「乗り切る」ためにチョコレート消費が発展した。 20世紀前半まではカトリックの一般家庭でもそれらの期間は、肉食しないなどの習慣が守られていた。だから修道院内ではなおさら、今でも自主的に40日の絶食を課する修道者もいるくらいだから、一日一食、パンと水だけ、などという規則が長い間続いていた。 で、スペイン人がメキシコからもたらしたカカオ飲料。そのままではとても苦くてヨーロッパ人の口には合わなかったけれど、もとよりカカオにはカロリーもあるし、セロトニンレベルを上げる「幸せ効果」もある。 修道院内で、これにハチミツなどを加えて飲むようになった。 カレムと待降節の期間を乗り切るには最高だったのだ。飲料だから絶食の規則に縛られない。 けれど、カカオ飲料へのアディクションもあって、過剰消費となり、一部の聖職者はカカオを「悪魔の飲み物」だと弾劾した。 いろいろあって、結局、その効用を鑑み、「悪魔の食物にするには惜しい」ということで1664年アレクサンドル七世に正式に許可された。 ルイ14世の王妃、オーストリアのマリー=テレーズ(といってもスペインのハプスブルク家出身)は、まさにカカオ中毒だったらしく、一日に何リットルものみ、宮廷中にカカオの香りが充満していたという。23年で6人の子を産んだが、当時はすべて公開出産で3人目が肌の黒い女の子だった。仕えていた黒人の小姓の視線で黒くなった、カカオの飲み過ぎで子宮が黒くなったからと説明され、40日後に死んだとされた。 その後、フォンテーヌブロー城近くのモレ・シュル・ロワンにあるベネディクト修道会にルイーズ=マリー・テレーズという名の黒人修道女が王からの年金で暮らしていたことが分かっている。ルイとマリー・テレーズはそのまま王と王妃の名前だし、「モレス・ド・モレ(モレの黒い女)と呼ばれた彼女は、死んだことにされた娘か、王の庶子か、王が保護した娘かと噂された。 今もこの町の教会の近くに、「La Mauresse」「というチョコレート専門店があり、ブラックチョコの名前にもなっている。 同じくハプスブルク家でウィーンのマリア=テレジアの末娘でルイ16世の妻となったマリー=アントワネットも、薬を飲むときには薬剤師が王妃のためにチョコで包んだ丸薬を用意したという。 「固形チョコレート」ができたのは19世紀以降だけれど、「キリストの血」として聖餐に使うワインと共に、チョコレートとワインが修道会の二大特産品となったのには、このような経緯があったのだ。 フランスのカトリック文化とグルメ文化は、切っても切れない。
by mariastella
| 2020-02-14 00:05
| 宗教
|
以前の記事
2026年 06月
2026年 05月 2026年 04月 2026年 03月 2026年 02月 2026年 01月 2025年 12月 2025年 11月 2025年 10月 2025年 09月 2025年 08月 2025年 07月 2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月
カテゴリ
全体
雑感 宗教 フランス語 音楽 演劇 アート 踊り 猫 フランス 本 映画 哲学 陰謀論と終末論 お知らせ フェミニズム つぶやき フリーメイスン 歴史 ジャンヌ・ダルク スピリチュアル マックス・ジャコブ 死生観 沖縄 時事 ムッシュー・ムーシュ 人生 思い出 教育 グルメ 自然 カナダ 日本 福音書歴史学 パリのオリパラ 人生観 日本とフランス 未分類
検索
タグ
フランス(1380)
時事(824) 宗教(756) カトリック(671) 歴史(440) 本(316) アート(256) 政治(227) 映画(188) 音楽(160) 哲学(114) 日本(112) フランス映画(111) フランス語(97) コロナ(85) 死生観(63) 猫(57) フェミニズム(50) エコロジー(48) 思い出(43)
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ファン申請 |
||