革命とカトリックのフランス日本でもなく、アメリカでもなく、フランスという立ち位置にいるから見えてきて納得できることがいくつかある。 そのうちの一つは、フランスという国が、宗教改革があって、宗教戦争にみまわれたヨーロッパの中で、いろいろな棲み分けのタイプがあったのに、結局、中央集権的なカトリック国に留まったことと、民衆の蜂起を含む近代革命を経たという二点の組み合わせの妙だ。 フランス王は、ランスの大聖堂で聖油を塗油してもらって王権を「神授」され、ゲルマン系の神聖ローマ帝国やローマ教皇の権威と張り合い、14世紀にはローマからフランス勢力下のアヴィニョンに教皇庁を移してフランス人の教皇や枢機卿を量産した。 そのような政治的理由から、フランスは、ユグノー戦争の後でナントの勅令によって国内のプロテスタントの安全を一応保障した。その後も、ハプスブルク家との覇権争いの中で、カトリックの枢機卿でもあるリシュリューがプロテスタントを支援するほど、政治が優先した。で、国力が安定すると、ナントの勅令も廃棄して、カトリック絶対王政が確立する。 その後に、フランス革命。 民衆のほとんどは普通に、生活上の宗旨としてはカトリックのままだった。 けれどもフランス革命を担ったブルジョワ勢力などは特に、カトリック教会や修道会の財産没収によって私腹を肥やすことになる。 キリスト教そのものがどうとかと言うより、ローマ・カトリック繋がりのネットワークを解体したかったのだ。だから、これを反教権主義という。つまりローマ教皇の権威を否定する。その意味では、イギリスのように、ローマと縁を切って「国教」化した国と変わらない。 でも、フランスの場合は、「王権」も否定し、王の財産も没収した。 で、その後ナポレオンやらいろいろな危機的な時期を経て、結局、「民衆による革命」を共和国アイデンティティにするという政治的決定がなされた。 このアイデンティティの「教育」は徹底していた。68 年5月革命から、2019年の黄色いヴェスト運動から交通の大規模長期スト今に至るまで、基本的に、世論に根強く支持されているのはその成果だ。 それと同時に、その「公教育」と「反教権主義」も実はセットになっている。 19世紀のフランスで書かれた近代の「フランス史」「宗教史」「キリスト教史」は、歴史学、宗教学、など「学問」のスタンダードとなっているけれど、実は、どれも、「反教権主義」のバイアスが強くかかっている。 たとえば、12世紀のパリ司教ピエール・ロンバールのように、男女平等論を展開した人などは一切無視された。(『女のキリスト教史』p49で、女は男の心臓の外在化だという説を紹介したが、この人のものだ。) もちろん、実際は、「イエスの教え」は男女差別だけではなく身分差別も障碍者差別も否定してすべての人の尊厳を説いたことでそれこそ「革命的」なものだった。父権的社会の真ん中でそんなことを説いたから殺されたわけだ。 その後で女性を核として原始キリスト教共同体が構成され、女性の存在感があまりにも大きかったからこそ、社会的リスクを軽減するためにパウロが「妻は夫に従え」的な言葉を残した。でも、同時に、当時の感覚ではやはり画期的な、「夫は妻を愛するように」という言葉も残している。 (「そのように夫も、自分の体のように、妻を愛さなくてはなりません。妻を愛する人は、自分自身を愛しているのです。(エフェソの信徒への手紙 5-28)」) けれども、フランス革命と反教権主義が、無神論イデオロギーと知識人アイデンティティに結びついて根づいた19世紀には、パウロの「女性差別的」言辞が強調されたキリスト教観に基づいた「歴史」がスタンダードとなったのだ。 19世紀にフランス語で書かれたフランス史やヨーロッパ史は、学問の世界で権威を持ち続けた。 もちろん、どんな歴史も、視点や視座や、それが書かれた時代の文脈によって変わってくるのは当然だ。 でも、今に至るまで「国際社会のスタンダード」だと一応の合意を得ている「基本的人権」の自由平等の「普遍原理」の中に、カトリックと革命によって明らかなバイアスのかかった「フランス」性が潜んでいる。それを意識するといろいろなことが分かってくる。 (続く)
by mariastella
| 2020-02-20 00:05
| フランス
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