今年に入って、クリスティーヌ・ベイルと踊っていたのはイギリスの振付譜だ。
カップルで踊るクーラント、メヌエット、ジーグが一続きになっている組曲なのだけれど、その振付の「抑揚」は独特だ。
アングロサクソン国のバロックダンサーは、何というかステップごとの体重のかけ方に「融通がきかない」硬い感じの踊りをする。
ほとんど内臓の動きなどを味わっているかのようなフランス風の揺らぎがない。
ところが、振付には細かい動きがたくさんある。ずばり、マニエリズム的振付なのだ。
このタイプのマニエリズムはフレンチ・エレガンスでは敬遠される。
メヌエットなどは特にそうで、基本的なステップ(6拍で4歩、常に右足から)が3種類くらい方向を変えてあり、それとヘミオラが自在に組み合わさるという感じだ。
けれどもこのイギリス型振付は、カップルのシンメトリーで左足から動く時もあるし、とにかく細かい。2小節ごとにステップも変わり、2小節(これが6拍の一単位)内でも頻繁に体の向きも変わる。
振付を覚えるのがこんなに厄介なメヌエットははじめてだ。
振付譜に色を付けなければ混乱する。
でも新鮮。これがクーラント。
これがメヌエット。ダンスを熟知していない演奏家が弾いたら、まったく踊れない。