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L'art de croire             竹下節子ブログ

グローバルな食文化は可能か?

今の時代はインターネット、SNSによって、情報があっという間に世界中に拡散したり、キャッチされたりできる時代だ。日本のような国では、グルメ情報もあふれていて、大都会にいれば世界中の伝統食だって味わうことができる。でも、「食」に関しておもしろいのは、グローバリゼーションはあっても、画一化は起こらないというところだ。

マクドナルドのように世界中を席巻しているファストフードだって、それぞれの国で特徴のあるヴァリエーションが生まれるし、「本場」のアメリカ(トランプ大統領 ?)でもなければ 、ハンバーガーを主食代わりにする人は、非アメリカ文化圏にはめったにいないだろう。

たとえばヨーロッパ人でも、朝食にパンを主食とする点では共通しているけれど、ドイツ人が主食とするパンとイギリス人のパンとフランス人のパンはみんな違うし、それは21世紀になっても変わらない。

もちろん、他のものが入って来て定着するということはある。

今から40年以上前には、イギリスのサマースクールに短期留学したフランスの中学生がコーンフレークをおみやげにたくさん買ってくるということがあった。日本ではすでにコーンフレークを食べていた私はそれを見て驚いたのを覚えている。

今ではフランスのスーパーにだって、あらゆる種類の朝食用シリアルの箱が並んでいる。他の食材でも「隔世の感」がある。

でも、フランス人の「主食」は、やはり昔ながらのバゲットなどのいわゆるフランスパンだ。

イギリス風に食パンをトーストしたりドイツ風のパンを食べたりしたりすることもあるだろうけれど、「主食」とはならない。

今は、地球環境にやさしいタンパク源としての「昆虫食」が注目されている。

日本でも長野県のイナゴ食とか蚕のサナギ食とか聞いたことがあるし、お招きしていただいたお宅で実際に見たこともある。(でも食べなかった。)

フランスでもエコロジーブームの波に乗って昆虫入りのクッキーがあるようだ。こういうの。

これを、パーティでアペリティフのつまみ用に持って行ったら、その時には話題になって面白がる人は多いだろうけれど、もし、同じメンバーのその次のパーティにも、またその次にも、昆虫クッキーを持って行ったら、正気を疑われかねない、とジョークにしていた人がいた。

(そういえば、アメリカ土産の「サソリ入り」の透明のスティック・キャンデーをお土産に買ってきたものを見たことがある。「見せる」だけで、ずっと冷蔵庫にしまわれていた。あれ、どうなったんだろう。)

「地元」の食品では、話の種にもならないし「インスタ映え」もしないだろう。

でも、消えない。そして、時代遅れとか古臭いとかとも言われない。

これが衣類ならば、もっと簡単に「画一化」しそうだ。

国連代表の男たちはサウジアラビアなどの例外を除くと、世界中のどの地域から来てもスーツにネクタイというスタイルだ。デニムパンツなども男女問わず広がっているし、ファッション界が仕掛ける毎年の流行色やスタイルもかなり広まる。

食べ物の場合は、外国の食文化を「輸入」しても、「似て非なる」ものになることもある。味付けも変化する。フランスで中国人が経営する「寿司屋」は日本のものとは違うし、「中華料理店」も、日本でのそれとフランスでのそれは大分違う。そういえば日本のラーメン文化のように独特に発展したものもある。

思えば、「食文化」については、比較文化論の対象としてはあまり掘り下げられたものを見たことがない。

他の文化現象と違って、観察するだけでなく実際に口にしないと論じるのが難しいということがあるだろう。

世界中の珍味を食してまわるグルメ評論家はいても、食文化を通して社会学、文明論、人間性についてまで考えていくというのはなかなか困難な作業だ。「普遍主義」が成り立たない分野でもある。

拒食症からアディクション、胃瘻による延命まで、実存的な葛藤や闇がついてまわる。

グローバル化ってなんだろうな、とあらためて思う。


by mariastella | 2020-05-20 00:05 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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