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L'art de croire             竹下節子ブログ

フランス人がマスクをつけない理由など

昨日に続いて、つい気になる日本でのコロナウィルス報道を読んで気づいたことを忘れないうちに書いておくことにした。

一つは、日本では病気で仕事を休んだら有給休暇扱いになるのが普通であるらしいこと。

私は日本でいわゆる「勤め人」として働いたことがないから知らなかった。

フランスでは、毎月の給与が出る働き方をする時には、雇用者が健康保険に積み立てをするので、病欠をすると自動的に健康保険が給与補填をするので、月給は変わらない。

具合が悪くて一日だけ休むというようなときは自己申告でOKで、数日となると医者の診断書が必要だ。だから、年末年始の交通ストが長引いた時に、「病欠」の診断書が異常に増加した。

普段でも、ちょっと休みたいという時にそれに「協力」して診断書を書く「主治医」のスキャンダルは後を絶たない。ストの時には、いや、ストへの参加で疲れ、ストレスも強くなり健康を害したから「病欠」に値する、という反論もなされていた。

フランスのストの多さって、この辺にも理由があるのかもしれない。

ましてや熱が出ても出勤し続けるフランス人など皆無に近いだろうから、ウィルスの蔓延は防げるかも。

もう一つは、このパリで「差別」的扱いを受けた韓国学生の話。

メトロで席が空いたので座ったら、両脇のフランス人がさっと立ったというのだ。

その記事のイラストにはひとつ間違いがあった。マスクを着けていないのだ。学生の話の文脈からすると、彼はマスクをしていた。

アジア人だから避けられたのではなく、「マスクをしているアジア人」だから避けられたのだ。

私も日本ではマスクをつけるけれどフランスでは咳きこんでいる時も絶対に着けない。

ここでは「他の人への感染リスクを防ぐためにマスクをつける」という発想がないからだ。

他人から移されるのを防ぐためのマスクという発想もない。

街中でマスクをしていれば「重大な病人」がなぜ外に?というイメージになる。

そもそも日本風のガーゼのマスクなど病院以外には出回っていない。

ついこの前までは、一般のフランス人が知っているマスクといえば、厚紙でできた工事用のホコリ除けマスクだけだった。

でなければ、マスクとはまさに「覆面」、顔を隠すものという認識だ。

空き巣や強盗、デモの度に出没する壊し屋、最近では、一般のデモ参加者も警察による催涙ガス予防のためにゴーグルやマスクをつける人も少なくない。それでも、デモの参加者がそのような「装備」をしていると事前にチェックされることがある。

要するに「マスク=暴徒」、あるいは顔出しをしたくない犯罪者というイメージだ。

「サングラス+マスク」で歩いていたら、即「あやしい」。

そもそも、公共の場で「顔」を隠してはいけない、という条例やコンセンサスがある。

だから、顔をすっぽり覆うイスラムのヴェールをつけて公道を歩くのも本来は禁止されている。

身分証明書には無帽の顔写真が必要で、原則的には、いつでも、公共の場所では身分証明書との照合ができる「顔」でいなくてはならない。

パスポートを持って旅行する日本人は通関でマスクを外してください、と言われるのを知っていると思うけれどそれと同じだ。

むろんこれは「原則」であって、真冬には頭から顎、首まですっぽりかぶる毛糸のカグールをつけて登下校する子供たちはたくさんいる。もとは僧帽から来たらしいけれど、このカグールも、マスクが一般的ではないフランスでは、大人が昼間につけて歩いているとまず「あやしい」ことになり、サングラスにカグールとなると、警官に職務質問されて身分証明書を求められかねない。カグール、マスク、サングラスなどで顔を覆えば、人種も分からないし、不法滞在者やテロリストの警戒の対象になる。

全身系イスラムヴェールについては、「禁止」の条例は生きているものの、実際はすでに有名無実化している。

「女性」だと確認できる時点で、「危険」はないと見逃されるからだろう。

でも、この「黒ずくめ」の「女装」をして男性テロリストが潜伏した例もあるし、女性テロリストもいる。

まあ、「顔出し」したところで、監視カメラに写って「犯行後」に人物認定されたとしても、自爆型テロリストの犯行を防ぐには「もう遅い」。

面の割れていない、指名手配もされていない本気のテロリストなら顔を隠して職務質問されるよりも、顔出しをしてことに臨んだ方が「成功率」は高いのかもしれない。

で、アジア人のマスク。

マスクだけなら、目の感じでアジア人だと分かることが多い。そしてフランス人は一般に、アジア人に対してはテロや犯罪や暴徒としての「認識」はないから、「あやしい」のではなく即「伝染病」というスイッチが入る。

マスクさえしていなければ、派手に咳きこんでいなければ、パリには観光客も含めてアジア人などたくさんいるから、そして一般的には暴力やテロと縁のない「おとなしい」人種だと思われているから、メトロの中で不特定多数の人から避けられる、ということはまずないと言えるだろう。

私は日本人だから、この時節、パリで出会うアジア人がマスクをしていてくれたら、ほっとする。

でも、やっぱり、自分では絶対につけない。

普通のフランス人がマスクをつけて闊歩する時代になったら、それはそれで、怖い。


by mariastella | 2020-02-17 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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