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L'art de croire             竹下節子ブログ

アメリカの「暴動」とフランスと人種差別

アメリカの「暴動」や人種差別などに対してフランスからはどう見ているかという質問をいただいたので、少しだけ。

フランスでも、アメリカをモデルにして、黒人の警察官を「売却済み」(つまり権力側に身売りした?)と攻撃したデモが一度ニュースになったけれど、ネット拡散用に周到に「演出」されたものだということであまり話題にならなかった。
「暴動」といっても、フランスでも、デモ後に流入する暴徒、略奪グループというのは珍しくないし、時にはそればかりがクローズアップもされるし、それこそアメリカのニュースなどでフランス全国に暴動、などという切り取られ方をすることもある。警察との関係が悪くなる時も実際にあるけれど、警察のシステムなどがアメリカとは違うし、普通にデモをする人が銃を持つということももちろんない。
で、「フランスは人種差別の国だと思うか?」という世論調査に70%がノーと答えている。
『最強のふたり』で日本でも有名になった黒人人気俳優のオマール・シーも「警察はリスペクトすべきだ」とコメントした。
『最強のふたり』のもととなった実話は、白人の富豪と暴動」や人種差別などに対してどう見ているかという質問をいただいたので、少しだけ。

フランスでも、アメリカをモデルにして、黒人の警察官を「売却済み」(つまり権力側に身売りした?)と攻撃したデモが一度ニュースになったけれど、ネット拡散用に周到に「演出」されたものだということであまり話題にならなかった。
「暴動」といっても、フランスでも、デモ後に流入する暴徒、略奪グループというのは珍しくないし、時にはそればかりがクローズアップもされるし、それこそアメリカのニュースなどでフランス全国に暴動、などという切り取られ方をすることもある。警察との関係が悪くなる時も実際にあるけれど、警察のシステムなどがアメリカとは違うし、普通にデモをする人が銃を持つということももちろんない。
で、「フランスは人種差別の国だと思うか?」という世論調査に70%がノーと答えている。
『最強のふたり』で日本でも有名になった黒人人気俳優のオマール・シーも「警察はリスペクトすべきだ」とコメントした。
『最強のふたり』のもととなった実話は、白人の富豪とアラブ系の介護人だ。
それを黒人の介護人という設定で映画にしたのは、視覚的には「白人と黒人」の方がコントラストがあるし、そもそも「黒人差別」より「アラブ人差別」の方が社会問題であるフランスの事情があるからだ。
その頃のこんな記事を書いた。

おおまかにいうと、アメリカの黒人の多くは、黒人奴隷として買われてきた人の子孫で、フランスの黒人は、旧植民地のアラブ人と同じく、アフリカから移民や出稼ぎにきた人の子孫、という違いがある。アメリカで言えば、同じように差別や貧困の問題も抱えているヒスパニックと似たような感じだろう。もちろんアメリカそのものが「移民国家」だし、建国の中心となったWASPのメンタリティの影響も大きい。
フランス人が刷り込まれている「共和国アイデンティティ」では、人種というコンセプトが否定されているし、宗教のアイデンティティも否定されている。

宗教が、「普遍宗教」であっても、完全に「国民アイデンティティ」となっている国は、サウジアラビアのような特殊な国だけではない。セルビアでは、セルビア人のカトリック司祭も、セルビア語でミサを司式するとクロアチアのスパイだと思われて、ハンガリー語やクロアチア語でミサを司式することを余儀なくされた時代が続いた(つまりハンガリー人やクロアチア人のコミュニティ専用の活動だという形)。
(セルビアは東方正教会のセルビア正教会で80%以上がを占めるる。カトリックは5%ほどだけれど「ハンガリー系」共同体で、その他は、福音派などが勢力を伸ばしてはいる)
イギリスももちろん女王が国教会の首長であるから、少なくともシンボリックにはアイデンティティと切り離せない。
「国教」というコンセプトを廃止しても、「王家」「王族」がカトリックだったりプロテスタントだったりという棲み分けの伝統は今も残っている。
それに比べると、やはり、フランスは、文化的に圧倒的な強度のあるカトリック国のくせに、フランス革命の理念でそれを政治的に「上書き」することにかなり成功している。そもそも、フランス革命の理念や人権宣言などは、歴史的にヨーロッパの政治勢力であったカトリック教会ではないけれど、そのルーツにある「キリストの教え」に合致しているので、フランスのカトリック教会は生き延びるために、限りなく共和国テイストの「新しい様式」を採用した。

また、旧植民地国からの移民の中でも、フランス語圏の旧ベルギー領コンゴをはじめ、結果的に、フランスよりも「しっかりカトリック」のアフリカ人が少なくない。
前にこういう映画も紹介したことがある。

このように、歴史的背景が全然違うので、「暴動のニュース」だけでアメリカとフランスを比べることなどまったく不可能だ。特に今のアメリカは大統領選運動の真っ最中だし、格差や分断の本質的な問題を、「黒人差別」に回収することで明らかになることと逆に見えなくなってしまうこととがあるのだろうと思うと、識別や分析は慎重にしなければ、と思う。

by mariastella | 2020-06-08 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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