Jean-François Braunstein «la philosophie devenue folle : Le genre,l'animal, la mort≫

ジャン=フランソワ・ブロンシュタインという哲学者の『狂った哲学ーージェンダー、動物、死』
は、アングロサクソン由来のジェンダー・スタディ、アニマル・スタディ、バイオエティックの三つの流れを、そのもとになった研究を渉猟し分析した本だ。
私が思っていることと近いけれど、それをこれだけの資料をもとに言語化してくれているので頼りになる。
ヒューマニズムは、性差、人下と動物の差、生と死の差、などの境界を見つめ、広げていく形で発展してきたのに、これらの潮流は境界を消滅させる形で出発した。そのことによる弊害、というより実存的な危機が生まれつつある。
日本語で訳されているかとネットで調べたら、唯一、阪大大学院のこの論文にだけ名前が挙がっていた。
この論文にもあるように、科学哲学者としてのブロンシュタインの考え方は、むしろ日本の伝統に近いくらいだ。それなのに、日本はどうして、歴史的にも全く相いれないようなアングロ・サクソン型の思想ばかり紹介してしまうのだろう。やはりそこから派生する経済的・政治的メリットがあるからなのだろうけれど。実際、ジュディス・バトラー、ピーター・シンガー、ダナ・ハラフェイの本などはすぐに読めるようなのに。
ともかく、この本でブロンシュタインが丁寧にたどってくれる異様なポリコレの潮流を把握した上で、自分の考えをあらためて整理して発展させていけるという点で、本当にありがたい本だ。
これ自体が新しい考えの提示というわけではない。でもとても役に立つので日本語にもぜひ訳されればいいのに、と思う。