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L'art de croire             竹下節子ブログ

7月14日のマクロン、マリー=アントワネット

7/14は、はじめての無観客パレード(シャンゼリゼのパレードではなくコンコルド広場での小規模なもの)、無観客の野外コンサートや花火など、コロナ禍での異様な革命記念日となった。

マクロンが公邸でジャーナリスト2人を前に1時間以上もインタビューを受けた。
彼の能弁はやはり羨ましい。
日本の首相ではあり得ない。語彙の量が違う。

フランスではcovid19の感染率がR1(一人の感染者が一人以上にうつす)を超えたそうで、専門医たちも「第二派」の可能性があるという人とないという人に分断されているそうだ。空気感染の可能性も再び問題にされてきた。

で、マクロンは、公共交通機関の中だけではなく、あらゆる公共の場の屋内でのマスク着用を8/1から義務化すると言っている。(条例を発効するのにそれくらいかかるからで、実際はすぐにマスクをしてほしいと言った。ベルギーでは7/11から、イギリスでは7/24からの着用義務が決まっている。)

今はスーパーでも、マスクをしていない人がたくさんいるけれど、これから増えるのだろう。スーパーのレジ係で、自分は喘息でマスクをしていると苦しい、と言ってノーマスクの人がいた。どうせレジと客の間にシールドが設けられているのだから無理にマスクしなくてもいいと思っていたけれど、あの人は8月からどうするのだろう。

読唇によってだけ話し言葉を理解するタイプの聴覚障碍者のことも気になる。
一度も手話を習うことなく、最初から読唇法の聾啞クラスで学んで発語もできて、健常者との会話がほぼ普通に成立する人たちが存在する。

彼ら彼女らにとって、全員マスクの世界は恐るべき「沈黙」の世界になってしまう。
バリアフリーどころか全世界にバリアがかけられるようなものだ。

そんな7/14だったけれど、医療従事者や、covid19の患者の世話をして亡くなった医療者の子供などを招待して、外出規制期間の毎夕8時のように出席者全員が拍手するというシーンがあり、「いつもより感動的だった」という人すらいた。

私はコロナに関するこういう光景にもう情緒的に反応するのが嫌でフィルターをかけているので、何も感じなかった。
大統領や大臣に直接感謝されて涙ぐむ医療従事者の映像も繰り返されたけれど、同じ日に、医療従事者がマクロンの提案する給料アップに反対するデモ(一律月300ユーロアップを要求しているのに提案されたのは183ユーロでしかも段階的、というもの)があった。そのデモの終わりにはまた暴徒闖入があって、転倒した憲兵を襲うなどのシーンも繰り返し流された。こういうニュースが並行して展開するのは、ある意味、フランスらしい。

私には、同じ日のもう一つのニュースの方が興味深かった。

フランスがスウェーデンのフェルゼン家から買って国立図書館に所蔵しているマリー=アントワネットの手紙の話だ。彼女と不倫のうわさがあったスウェーデンの貴族フェルゼンに、囚われの身のチュイルリー宮から出した数通の手紙で、かなりの部分が読めないように丹念に上書きで消されている。それをX線を通して解読したら、「気が狂うほど愛している」などの言葉が浮かび上がってきたのだ。

マリー=アントワネットとフェルゼンの恋というと、「ベルサイユのばら」を思い浮かべてしまう。もちろん不倫のうわさがあったこと自体は歴史的事実なのだけれど、決定的な「証拠」が出たわけだ。まあ17、18世紀のフランス王室、「不倫は文化」みたいなものだったにせよ、外国出身の王妃が別の外国人と不倫。そう簡単にできるものだったのだろうか。そして、王妃を何とか逃がそうとフェルゼンが奔走したことや、結局マリー=アントワネットが王妃として運命を受け入れることを決意して断頭台に上ったことも劇的だ。宝塚の上演で、私と同じバレエ学校にいた先輩がマリー=アントワネット役を演じたことがある。彼女の初舞台もバレエの友達と観に行った。
彼女がクライマックスシーンで「私は、フランスの、女王なのですから」と毅然としていうシーンははっきりと覚えている。

今思うと、「女王」って変だ。どう考えても「王妃」なのに。

でも、「ベルばら」ってすごいなあ。





by mariastella | 2020-07-16 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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