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L'art de croire             竹下節子ブログ

聖者たちの谷  La Vallée des saints (追記あり)

夏の終わりのブルターニュ旅行の続きです。


とにかく「広々とした戸外」の観光という基準で選んだのが、前から行きたかった「聖者たちの谷  La Vallée des saints 」だ。

前にこういう本を読んでいた。

聖者たちの谷  La Vallée des saints (追記あり)_c0175451_04371592.png
イースター島のモアイ像に魅せられた著者が、自分たちも石のメッセージ、石に託した夢を残そうと考えてスタートさせたプロジェクトだ。
聖者たちの谷  La Vallée des saints (追記あり)_c0175451_04215376.jpeg
100年かけてブルターニュの歴史に残る1000人の「聖人」の像を作るというプランだ。もちろん巨大でなくては意味がない。3mから7mが基本。
2008年以来、北ブルターニュを見渡すカルノエの丘の上には、ブルターニュ産の薔薇色の御影石を使って様々な彫刻家の手によって自由に造形された聖人像がすでに百体以上も配されている。

毎年5月から10月の間、一体30日ほどかけて現場の戸外のアトリエで制作されている。
ブルターニュの「カトリックの聖人」というのは実在した人たちだけれど、ローマから北進して来たのではなく、紀元5-6世紀にかけて、ウェールズやコーンウォールから英仏海峡を渡ってケルトの地を「宣教」に来た人で、ケルトの神話や伝説や英雄譚、異教の奇跡譚などと習合して、独特の世界を築いている。

ブルターニュ建国?の7聖人というのがいて、彼らがBretagneの七つの司教区それぞれを創設し、それぞれの像が、自分の司教区のカテドラル(司教聖座)の方角に顔を向けて立てられている。(Saint-Brieuc, Saint-Tugdual à Tréguier, Saint-Malo, Saint-Samson à Dol-de-Bretagne, Saint Pol Aurélien à Saint-Pol de Léon, Saint Corentin à Quimper et Saint Patern à Vannes)数千年後かに、今の文明だのキリスト教だのが滅亡していたら、次の文明の人々は、彼らがどうしてばらばらの向きになっているのか不思議に思うことだろう。

一つ一つの像に、「意味」と「物語」と、土地への愛と「群像の力」とが重なって、広々しているのに濃密な場所になっている。御影石彫刻の野外ミュージアムとして最高で最大という感じだ。

それぞれの像のエピソードや図像学的解説をすることもできるし解説書もあるのだけれど、このブログではともかく、私の気に入った像の写真を記録していこう。(少し説明捕捉しました)

これは入り口
聖者たちの谷  La Vallée des saints (追記あり)_c0175451_01562858.jpeg
聖女アリエノール(アズノール)
6世紀ブレストの王の娘。父と狩りに出た時に父が蛇に襲われた。彼女はとっさに自分の胸をはだけて、乳をしぼり出す。乳のにおいに惹かれた蛇が乳首に食いついた時、彼女は乳房を切り取った。この勇気をたたえて神は金の乳房を与えた、という伝説。その後、いろいろあってアイルランドに流されて聖人となる息子を生む。乳母の守護聖女。すごい目つきだ。


これは聖コナン
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聖コナンはアイルランドの聖職者でスコットランド王室の教育係だったという七世紀の聖人。シャーロック・ホームズで有名なスコットランドのアーサー・コナン・ドイルの名前。それが日本の「名探偵コナン」というコミックになって、フランスでも訳されている。コナンは21世紀の日仏の若者に知名度抜群の名になった。この像では戦士として表現されている。

これがアトリエ。
聖者たちの谷  La Vallée des saints (追記あり)_c0175451_01570536.jpeg
これは全身像ではない聖人の歩み。
聖者たちの谷  La Vallée des saints (追記あり)_c0175451_02433565.jpeg
(続く)







by mariastella | 2020-09-23 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

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