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L'art de croire             竹下節子ブログ

『ジャンヌの年』《 L'année de Jeanne》 Franck Ferrand, Plon



『ジャンヌの年』《 L\'année de Jeanne》 Franck Ferrand, Plon_c0175451_22080485.png
フランク・フェランの『ジャンヌの年』。今注文中。NETで公開されている前書きと第一章の一部分ともう少しを読んだ。わくわくする。


私はもともと仮想座談会とか仮想対話を書くのが好きだ。
本の中では『渡り鳥の見たキリスト教』(フリープレス)に再録した日本の188人殉教者列福についてのものや、『陰謀論にダマされるな!』(ベスト新書)のものなどがある。

今年コロナ禍が始まった時にも、早速、2年後に、ウィルスを異常に恐れて閉じこもって無事に過ごした人、注意していたのにもかかわわらず感染した人、ウィルスを侮って強気で暮らしていたのに罹患しなかった人、罹患した人、の4人を想定して、当時の気持ちやその後のことを振り返ってとことん話し合う、という設定で書き始めた。けれどもそうするうちに、状況は錯綜し、中国と日本と「欧米」では一見似ているけれど全く違う展開があり、どこに住んでいたか、ということも含めて複雑になり過ぎたのであきらめてしまった。

このフランク・フェランも、コロナ禍の外出規制の間にこの本を書いたのだそうだ。
コロナ禍の前にも、黄色いヴェスト運動やイスラム過激派によるフランスの一部地域の実質占領などがすでに深刻な問題になっていた。

コロナ禍ですべての脆弱さが明るみに出て、暴力が多発し、各地域が分派し始めて、2022年の大統領選の頃はもう「フランス」というアイデンティティが崩壊していた。そこに、登場して選ばれたばかりで状況に対処できないままでいた無力の大統領を鼓舞してフランスの危機を救ったのが、ジャンヌ=アンティッド・オービエというニューカレドニア出身の18歳の娘だった。この若い女性が、どのようにしてこのフランスの危機を救ったのか、という一部始終については、その後ネット上にいろいろな資料が出回ったけれど、当時大統領顧問の1人だった女性が、全てをメモしたり録音していたりして、半世紀近く経った2070年になって時系列にまとめた。

というのがこの本の設定だ。
未来から近未来を振り返った手記という体裁だが、その時間間隔と歴史感覚が絶妙だ。
しかも、この21世紀のジャンヌの多くの言葉やフランス救済の展開が、実は、ジャンヌ・ダルクの言葉や15世紀のフランスの危機脱出の経緯とパラレルになっている。
「百年戦争」もジャンヌ・ダルクも、「過去」のこととは思えない。

第一章の最初に引用されているチェスタートンの言葉が

「列車に乗り遅れない唯一の方法は、一台前の列車に乗り遅れることだ」

というもので、これって、皮肉だけれど、どの世代の人にも微妙に心当たりがあるのではないだろうか。60年代安保に乗り遅れた世代が70年安保で過激化するとか、全共闘運動に乗り遅れた世代がしらけ世代になるとか、バブル時代に乗り遅れた人が…など、いろいろ思いついてしまう。

ジャンヌ・ダルクがフランスを救った歴史は「奇跡」というのにふさわしい。
私はジャンヌ・ダルクについて2冊書いている。
去年講談社学術文庫にいれてもらった『ジャンヌ・ダルク』と、白水社の『戦士ジャンヌ・ダルクの炎上と復活』だ。

フランク・フェランは歴史ものの本をたくさん書いているし、ラジオ・クラシックでの歴史的人物の列伝は私が愛聴しているものだ。でも著作を読んだことはなかった。
この本は、「目から鱗」の発想だった。歴史上の人物が時空をワープして現代に登場する、といった類のフィクションではなくて、歴史を超えた何か本質的なものに迫っている。大いにインスパイアされたい。





by mariastella | 2020-10-19 00:05 | ジャンヌ・ダルク
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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