笈田ヨシさんが、能とコンテンポラリーダンスと演劇を組み合わせた『綾の鼓』のライブビデオを送ってくださった。10月末にパリで初日を迎えたのにそのまま外出規制と劇場封鎖に入ったので公演中止になったのだ。次の日に無観客ライブを発信した。
空の観客席に発つ劇場監督の辛そうな解説が痛々しい。その後で笈田さんのコメントもあるのだけれど、役者、演出者としての長いキャリアで、90歳近い身で今回初めて舞台で踊ること、いつも新しいことに挑戦することのわくわくした気持ちを語っていて、さすがだなあと思った。
全編を観た後で、私も、「souffrance, je danse, je vis」と繰り返して、久しぶりにバレエシューズをはいた。能管による導入も、槻宅聡さんとのパリでのコンサートのことを想起させるので感慨深い。
この外出規制の時期にはあらゆる文化活動、アートシーンが、全て「自由」の戦いという意味を帯びてくる。
カリカチュアにまつわる「表現の自由」問題では、人やモノやコトを中傷したり貶めたりエログロの表現も守られるのに、美の追求や賛美や分かち合いという「表現の自由」はあっさりと「エッセンシャル」(生活維持に必要不可欠)ではないと切り捨てられる。教会のミサなども、宗教者たちが政府とネゴシエイトしていたのに結局ふたたび公開禁止となった。
霊的なもの、カルチャーにかかわるセクターが自主的に衛生条項を守りながら行使しようとしている「自由」を「エッセンシャル」でないと政府が決めつけるなんて、フランスのアイデンティティを裏切る非常事態だとつくづく思う。
以下は、笈田さんに言及した今までの記事です。彼は、やはり、すごい。