『ラッシュアワー3』とフランスジャッキー・チェンの『ラッシュアワー3』、ついにシリーズ最終作まで視聴。、第一作から10年近く経っているから1や2のようなキレがなく、新鮮味もないけれど、日本人が出ているのと、パリが舞台ということで観てしまった。 プラザアテネも、エッフェル塔のジュール・ヴェルヌも、よく知っている場所なのに、コロナ禍の今となっては、それこそ遠い昔の風景に見える。キャバレーに至っては、バブルの頃に日本からの観光客にお供した以来、行ったことはない。 黒人と中国人の警察官のペアというシチュエーションが香港やロスアンゼルスでは新鮮だったけれど、パリでは今一つぴんとこない。 そもそも、主要な「フランス人」キャストである警察、タクシー運転手、ダンサーの3人は、ポーランド人のポランスキー、アルジェリア系ユダヤ人(アルジェリアがフランスから独立した後イスラエルに移住した両親のもとで生まれたけれど、エリート・アシュケナージのユダヤ人からの差別があったのでフランスへ移住した。)のイヴァン・アタル、カリブ系ハーフのマヌカンということで、誰もいわゆる「純粋のフランス人」ではない。それでも普通にフランス人として認知されているのもフランスならではだ。 だから黒人と中国人のコンビそのもののインパクトが少ない。 でも、その代わりに別の偏見がたくさんちりばめられている。 タクシー運転手は、アメリカ嫌いだといい、アメリカは偉そうにしているけれどベトナムでもイラクでも負けたじゃないか、みたいなことをいうし、中国人は背が低い、と黒人のカーターがあしらうと、2m36の中国人バスケットボール選手がクンフーの師範代になって出てくるなどする。カーターの「黒人の魅力」の自己顕示はあい変わらずだし、さまざまなステレオタイプの強調が、アクション・シーンによって中和されている。 でも、考えてみると、これは2007年制作で、今なら、なんだか、いろいろ物議を醸しだしそうだ。 これが放映された前日に、フランスでサッカーのチャンピオンリーグ戦がPSGとトルコのチームで行われた。そこで審判の1人が「あのネグロが」と黒人選手を指したために、選手が抗議して試合が中止となるというはじめての事件が起こった。白人選手になら「あの白が」とは言わないで「あいつが」というはずだという。 うーん、「有色人種」という言い方もそうだけれど、白、黒、黄色と言っても、遠目に見て、白人のスポーツ選手は別に白く見えないし、アジア人選手も黄色く見えるわけではない。化粧を別としたら本当に白いのはアルビノで本当に黄色いのは黄疸などの「特異」なケースだ。黒人でもメラニン色素の多さは様々だけれど、遠目に「黒」と認識されること自体は不自然ではない。もちろんそこにあらゆる歴史的社会的政治的文脈が関わってくるし、「差別用語」としての含意は奴隷制から来たもので、フランスでは英語の影響からネーグルという言葉にその含意ができてきた。 前にも書いたけれど、フランスでは普通の音楽用語で、四分音符を黒、二分音符を白というので、「白は黒2つ分に相当します」などと生徒に教える時に微妙な雰囲気になる時がある。 でも、スポーツ界では、速さや強さなどが絶対基準なのだから、種目によってトップ選手の「人種」的優位の傾向というのは出てくるし、スポンサーにとってもファンにとっても、それはあこがれの対象になっても差別の対象にはならない。同じことはアートの世界にも学術の世界にも言えるので、「世間」の文脈とは違う。 フランスでずっと暮らしている日本人として、音楽やアートやダンスを通じていろいろな国のいろいろな「人種」と親しくつき合っている中でのパリの『ラッシュアワー』には、いろいろ考えさせられるところがあった。 ラストで運転手が悪のリーダーを撃ってリーとカーターを救うシーンは、「フランス人」の感覚ではあり得ないので、多くのフランス人は勝手にこの運転手が実は警察関係者だったと思ってみているらしい。 ストーリーとしては普通の「アメリカ嫌い」の運転手が、アメリカのスパイか何かに「なったつもり」で急に隠れた才能を発揮するという感じなのでその流れなのだろう。でも、「普通のタクシー運転手」が突然拳銃を手に入れてそれを正しく操作できるなんて、いくらコメディでもフランス人観客にとっては「あり得ない」から笑いのツボにもならないようだ。 そういえば、フランス語の吹き替えで観たので、アメリカで中国マフィアがフランス語しか話せないからカトリックのシスターに通訳を頼むというシーンは、「カナダ語」でしか話せないのでカナダのシスターに、という設定になっていた。そして吹き替えか何か知らないけれど、その言葉は本当に聞き取れないのでよくできていた。(ジャッキー・チェンと日本人俳優の会話ではちゃんと「日本語」が聞こえてきた。) 外出規制と映画館の閉鎖とが終わらないのでTVで映画を観てしまうのはまだしばらく続きそうだ。
by mariastella
| 2020-12-14 00:05
| 映画
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