クリスマス前の降誕節は、世界の終わりについて考える期間にもなっている。
コロナ禍にまつわる陰謀説もはびこる昨今、黙示録的終末観について、歴史学者ポール・エリオーがカトリック雑誌『La Vie』n.3927で答えた記事を読みながら要約。
Q : キリスト教は陰謀論に口実を与えているように見えることがあります。前ヴァティカン大使カルロ・マリア・ヴィガノがトランプ大統領に、エリート集団が民衆を奴隷化しようとする「グレート・リセット」を告発した手紙を出しました。それについてどう思いますか?
A : これは別に新しい現象ではありません。すでに、1960年代半ばから、西洋カトリック社会の中で僅かながら広まっていた陰謀論で、それが、ネットのSNSによって息を吹き返したということです。実際、18 世紀末以来広まった、カトリックのアポカリプスの伝統の大部分は様々な私的な啓示に基づいたもので、反カトリックの陰謀を想定しています。
sekko : ヴィガノ前ヴァティカン大使は、1968年に叙階されてからエリートの道を昇り続け、ヴァティカンの要職を経てから、ワシントンに常駐するヴァティカン大使として、2016年、定年の75歳まで勤め上げた。ところが、ワシントンの名誉大司教セオドア・マカリックのペドフィリア事件が表ざたになった時に、ヴィガノは自分がその件について警告していたのにヴァティカンがもみ消したという公開書簡を出してフランソワ教皇の辞任を求めた。2018 年8 月のことだ。
ヴァティカンは丁寧に慎重に対応し、調査をして400ページにわたる報告書を作成した。それによると、実際は、マカリックの調査をヴァティカンがヴィガノに依頼していたのに、ヴィガノがそれを怠っていたという。
そこにはアメリカのカトリック右派の政治的思惑がいろいろ絡んでいるのだけれど、ともかくヴィガノは自分はまだまだヴァティカンの汚職の秘密を持っていてそれを暴露する用意があると脅迫めいたことを言っていた。
それがエスカレートして、いつのまにか、西洋民主主義国権力者すべてに関係する陰謀論の告発となり、コロナ禍において、2020/5/8にワクチン陰謀論、6/7にドナルド・トランプへの公開書簡を送り、トランプを支持した。もちろんバイデンの当選を否認し、すべては「ディープ・ステート」による陰謀だと言っている。
第二ヴァティカン公会議の文書もよく読んでいないような老齢の「田舎司祭」などではない。アメリカに長く勤務したヴァティカンのエリートが、79歳にもなって、どうしてこのような過激な動きに出るのだろう。カトリック右派のロビーだけではなく福音派との関係もあるのだろうか。陰謀論とカトリック教会というのは使い勝手がいいのか相性がいいのだけれど、カトリック内部のこんなに「偉い」人がこんな風に発言を拡散するなんてやはりネット時代の歪みの一つなのだろうか。
この人の心理状態に興味がある。
(続く)