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L'art de croire             竹下節子ブログ

バイデンとキリスト教

少し時間が経ったけれど、1/20のバイデン大統領の就任演説について。


今回の演説は、歴代大統領の中で最も「キリスト教的」だと、アメリカのリベラル・カトリックは喜んでいた。

確かに、はじめてのカトリック大統領だったケネディはフリーメイスンの儀式は拒んだけれど、カトリック色は注意して一切出さなかった。そして他の大統領も「神」の加護は連発しても「キリスト教の神」に限定されないように気を使ってきた。それが長い間の「ポリコレ」だったのだ。

バイデンの演説で宗教っぽいところを見てみよう。(この日本語訳は、日本のネットで拾った読売新聞訳です。特に別の新聞と比較していません。)

1. 歴史と信仰、理性が道、すなわち団結の道を示してくれる。 :

ここで「信仰」という言葉を入れることは、フランスではあり得ない。ご法度。

2. 何世紀も昔、私が属する教会の聖人である聖アウグスティヌスは、人々は愛を注ぐ共通の対象によって特徴付けられると説いた。:

 これは画期的。「私が属する教会の聖人」ってわざわざ言っている。ケネディの時代には考えられない。

3. 聖書も言う通り、こう約束したい。夕べは涙のうちに過ごしても、朝には喜びの歌がある。私たちは力を合わせて切り抜けていく。:

これもしっかりキリスト教。「詩編30,5」だ。

4. 大統領としての最初の行動として、静かな祈りへの参加をお願いしたい。 :

5. そして私たちの国のために黙とうをささげよう。アーメン。 :

6. 努力と祈り  :

4 moment of silent prayer5say a silent prayer

この「祈り」が宗教的なので、政教分離国家のフランスではやはり使われない。

たとえば、1分間の黙とうはフランス語では「1分間の沈黙une minute de silence」となる。つまり敬意をこめた沈黙で、別に「祈り」でなくてもいいわけだ。日本語では普通に「黙祷」と言えるし、別にそれが宗教とも思われない。

もちろん今はアメリカでも無神論者が増えているから、これらの宗教的語彙に反発する人もいる。

この最後のアーメンamenというのも、menが男を連想させるからと、1/3 の議会で民主党議員のクリーヴァ―が演説を「amen and a-women」と締めくくったことが、挑発なのか無知なのかと話題になった。


7. 米国民の皆さん、神と皆さん全員に対する神聖な誓いと共に、はじめに立ち返り、今日の言葉を締めくくりたい。

8. 神のご加護がありますように。私たちの軍を神がお守りくださりますように。

この辺は就任演説の定番でクラシックだ。キリスト教の神がどうして「特定の国の軍隊」を守るのかと不思議だけれど、この「神」は「聖書の神」「キリスト教の神」ではなく、フリーメイスンの「宇宙の大建築家」風、フランス革命での「光」の神、「理性の神」のようなニュアンスだ。

アメリカの紙幣や硬貨に書かれる"In God wetrust"Godは「至高存在」ということだ。

バイデンがカトリックと言っても、アメリカのカトリックは二分していて、LGBTと妊娠中絶を否定しないバイデンに対して一部の司教らが、就任式前にすでにネガティヴなメッセージを発している。

一方ローマ教皇フランシスコは、「平和と正義のために動いてください」と好意的なメッセージを寄せている。そもそもフランシスコ教皇を認めたくないカトリックもいるわけで、彼らはTrump widows(トランプの未亡人)とも呼ばれているそうだ。

フランスにいると、このアメリカの宗教的アイデンティティに向ける激しい視線に感心する。フランスと日本は、宗教的縛りがほとんどない国だと思うので住みやすくて気に入っているのだけれど、日本の無関心さはまた独特だなあとも思う。

でも、いろいろな外交関係において、各国の宗教的センシビリティをちゃんと把握している方が有利だとは言えるだろう。

ということでここに覚書。


by mariastella | 2021-01-31 00:05 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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