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L'art de croire             竹下節子ブログ

カトリック・サプリ5 新刊

2/10、ドン・ボスコ社から『カトリック・サプリ』5が発売されました。

私はこのブログでは、カトリック系出版社の雑誌の連載をまとめたこのシリーズの新書を今まで紹介したことがありません。私のこのブログも、著作も、基本的に、特定の宗教と関係のない日本のマジョリティの読者を対象にしたものだからです。
私自身が、そういう日本の環境で育ち、宗教のいろいろなことには興味がありましたが、特定宗教への帰属意識がほとんどないし、日本にいた頃は、ミッションスクールとも縁がなく、日本のカトリック社会との接触もありませんでした。
だから日本のキリスト教用語も知らず、何の「忖度」もせずにものを書き始めたのですが、『カトリック生活』の編集長だったK神父がラブコールを送ってくれ、愉快で楽しいシスターたちとの交流も始まって、彼らから寄せられた無条件の信頼に感動しました。それ以来、彼らのお役に立てるなら何でも、ボランティアというか、日頃の行いの「罪滅ぼし」の感覚で協力させてもらっています。

月間『カトリック生活』はコスパが信じられないくらいに良い、すばらしい雑誌で、私がずっと連載できているくらいに自由で開けた雑誌です。でもカトリックの信徒やカトリック系の教育機関の生徒、父兄、教師の方などカトリックのシンパの方が想定読者ですから、一般の出版社からの本では書かない話題も遠慮せずに書いています。

去年は一年間、コロナ禍のせいで、日本にも行けず、フランスと日本で予定していたコンサートも中止、その間、いろいろ考えたメッセージを「疫病と神(仮題)」というテーマでまとめました(発売前にまたお知らせします)。
同時に、『カトリック生活』への連載も、コロナ禍の世界の中での考察へとシフトしていきました。それをまとめた新書は、いつもなら、過去2年間くらいのものを編集してもらっていたのですが、今回は、コロナ禍中でのメッセージを書き下ろしたものをかなり入れてもらえました。

コロナ禍の1年をフランスで過ごしたこととカトリックとの関係が切り離せなかったからです。
この1年は、つくづくと「健康と霊性」について考えさせられました。
ロックダウンや自粛などの不安や不便など、日本の方と共有できたことも多いですが、考えてみてください、今、この瞬間でも、コロナの感染者数とか重症者数とか死者数って、人口比にしたら、フランスって日本の10倍くらいの感じです。
もし日本にいるみなさんと同じくらいに恐れていたら、フランスにいると息もつまっていたのではないでしょうか。でも、まさに、この怖がり方、コロナ自体だけでなく、家族や近所、学校や会社や世間の目までを恐れなくてはならない日本を見ていると、変な話ですが、日本とフランスが逆でなくてよかったなあ、と心から思います。もし日本で本当に、よく脅されていたように、ミラノだニューヨークだといった多数の犠牲者が出ていたなら、日本人のメンタリティでは、ヨーロッパよりもはるかに深刻な二次被害、三次被害が出ていたのではと想像します。
地震や津波などの自然災害は、ある意味で繰り返されているし、目にも見えるので、ボランティアや宗教者の活躍も頼もしいですが、ウィルスという目に見えない災禍は、人を疑心暗鬼の中で分断してしまいがちだと思います。
日本でも、宗教者による各種の祈願はもちろん「寄り添い」もありますが、普段の宗教への無関心もあるし、感染症の前では互助が発動しにくく、政治家や専門家が次々と繰り出す「対策」ではなく全ての人を共感で結びつけるような言葉はなかなか聞こえてきません。
それを見ていると、昨年の復活祭期間に多くの犠牲者が出てもそれに耐えるためのメッセージ(言葉や音楽も含めて)をたくさん繰り出せる文化のあるカトリック文化圏は頼もしいなあ、と思いました。
この本が出る頃には、もうコロナ禍も収まっているだろうと考えていたのに、フランスでは各種の変異種が跋扈して緊張は解かれていません。そしてまた、イエスが十字架にかけられる「受難の季節」が近づきます。いざという時に弱者を全面的に支えてくれるメンタリティが発動し続けることを願っています。

これからどうなるか分かりません。
もし自分が運よく感染や発症を避けることができても、1年も続くこの危機感とフラストレーションによる不全感から逃れることができないとしたら、後はそれを《apprivoiser》して生きていかなくてはなりません。
この言葉、「飼い馴らす」という訳が普通ですが、『星の王子さま』の21章でキツネが言い始めて、何度も繰り返される言葉です。
コロナ禍を見て見ぬ振りもできないし、感染した人や家族の苦しみや自粛で職を失ったり精神を病んだりする人たちひとりひとりへの共感と助け合いを通してはじめて、この不全感をapprivoiserできる、ことを期待し、信じて、この本をお届けします。

by mariastella | 2021-02-12 00:05 | お知らせ
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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