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L'art de croire             竹下節子ブログ

ワクチン先進国と後進国?

最近、英米やヨーロッパ在住の日本人が「私たちはもうワクチンを接種できました。」みたいに一種のマウントを取っているSNSがあるらしく、それに対して、「日本のコロナ死亡者と桁違いである国の人に言われたくない」という反発やら、羨ましい、日本は感染予防は優等生だけどワクチンは劣等生、などという意見もあるらしい。

で、フランスに住む「高齢者」である私や私の周囲はどうしているかという質問を時々受けるようになったので、一応ここにコメントしておく。

私は個人的には、このウィルスに関しては、ワクチンもPCR検査も基本的に受けたくない。この1年以上、そして、14年前に一度高血糖が発覚してから年に数度、血液検査、腎臓機能チェック、白内障の手術の後は年に一度の眼底検査などを続けていて、主治医と意見を交換し合い、体調や年齢、周囲の人間関係、活動履歴などをチェックしながらの総合判断であり、主治医も私と同じ意見だ。(主治医とは医療関係の論文をメールで交換したりする仲だ。)

周りの「高齢者」には、「ワクチンを打たないと会いに行かない、孫にも会わせない」などとの子供からのプレッシャーでワクチンを打った人も少なくないし、持病などで不安のある人もワクチンを打っている。
それぞれの人がそれぞれのリスクやプラグマティズムによってベストだと思われる対策をすればいいので、「正しい一般論」などは存在しないと思っている。
個人的には、特に、「この戦いを勝ち抜くために1人1人がワクチンという武器を手に取るべきであり、そうでない人はエゴイストか敗者」というタイプの、特に「上から」の圧力には抵抗を感じる。

私にはそういうプレッシャーは直接ないし、生徒のレッスンも仲間との練習も続けている。
うちに迎え入れている生徒や音楽仲間についても、「不特定」ではなく、本人や親の仕事、衛生観念、生活状況、数年にわたる健康状態などを把握している人ばかりだ。
自分の車や自転車で来る人、学生でも、テレワークばかりで他の学生と接触していない人だ。

もし私がすでにウィルスに「曝露」していても、あるいは「無症状感染」していても、免疫システムはちゃんと機能していると思えるし、私にとって有毒性の低いと思われるコロナウィルスに対する抗体だけに特化するワクチンによって免疫多様性を低下させたくない。

でも、もし私の母がまだ存命だったとしたら、ワクチンを打ってくれ、というかもしれないし、母に会いに行くために自分もワクチンを打ったり検査したりすると思う。
(それを想像するだけでも、このパンデミーの世代間分断などの異常さが分かる。)

幸い今は私が「高齢者」なので、最悪、無症状感染者の生徒や友達との接触で自分が無症状感染者になっても、若くて元気そうな人に対するスプレッダーになるとは思えない。(そんなリスクがあるなら、フランス人がマスクもせず手も洗わなかった去年のはじめの方がずっとリスクが高かっただろう)

フランスでは一切無償(と言っても、日本人がよく言う「血税」から払われるわけだけれど)のPCR検査も、その有効性にも信頼を置いていないので、そんなもので「陽性」判定されて自由を奪われるのも嫌だ。

だから、旅行する時に検査やワクチン証明が必要な間はできるだけ動きたくない。
そして、どうしても動きたい場合には検査もするし、ワクチンも受ける。証明書が有効になるように、移動の2週間前に1回接種でOKのワクチンを主治医に接種してもらう約束をしている。ウィルス対策ではなく、自由の代償であり、「自由」を検査やワクチンで買う、と割り切っている。ワクチンという免罪符を入手済みの人たちから疎まれたり、不安を与えたりするのも、本意ではないからだ。

こう書くと、ひょっとして、えらく健康に自信を持っているように聞こえるかもしれないけれど、その反対で、私にとってはコロナよりも心配なウィルスや細菌や病気や加齢による機能の衰えなどたくさんな気がかりがあるので、とにかく「免疫多様性」を確保していたい。コロナで死ぬ確率は他の病気で死ぬ確率よりも低いと思うけれど、コロナの後遺症で免疫系が狂ったままの人には、ワクチン接種によってリセットされて後遺症が消えたという報告がある。朗報だ。まだまだこれからいろいろなことが分かってくるようで興味深い。

日本では、自治体の首長が優先的に接種したとかで批判されたり、逆にワクチンしない人が差別を受けたりという状況も生まれそうで、相変わらず「世間の目」との関係が一番大変そうだなあ、と思ってしまう。

イスラエルのように、成人はほぼ100%のワクチン接種で「コロナに打ち勝った」みたいな国で、内戦状態になってロケット弾や爆撃で人々が死んでいる「もっと大変な国」を見ていると、つくづく、健康であったり自由であったりすることの意味を考えさせられる。何が一番大切なのかを、社会と環境の中での自分のスタンスをよく考えて問い続けていかなくてはならない。


by mariastella | 2021-05-15 00:05 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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