Q : フランスの行政は、国内での日常の行為(レストランや買い物)などについてはこのコロナ査証の呈示強制はさしあたりやめたようです。けれども、また議論が起こることも可能です。どこまで行くのでしょう?
A : どの場所がという問題は最優先ではないと思います。この査証システムが、たとえ限定的にでもいったん導入されれば、それが拡大されないなどと言えるでしょうか?
もっとも危険なのは、パンデミーが収束し始めた時にも、そのシステムを維持しようという誘惑で、それに対して戦えるかということです。スマートフォンに組み込まれた「健康手帳」をそのままにして、大規模コンサートなどにおけるインフルエンザのような別の感染症予防のために使う、というやり方です。つまり、社会における「リスク・ゼロ」の考え方が導入されることで大きな問題が起こり得ます。
すでにヨーロッパ内の国境を越える移動に使われるコロナ査証は、これから先、国連のWHO(世界保健機関)が認定するすべてのパンデミーにも対応させるという前提を盛り込んでいます。つまりEUは別の病気にもこのツールを使おうとしている。そこが警戒すべきところです。
Sekko : WHOといえども、大国の思惑によってバイアスがかかりまくっていることは今回のコロナ禍で明らかになったことの一つだ。
「感染者数」とか死亡者数、陽性数、死亡率など、世界中で情報の精度や公開度も違うし、カウントの仕方も、検査の実態も違うし、各国内の衛生事情、医療保険制度、経済格差、気候、移民や難民の実態など、あまりにもばらばらであることも自明だ。
そんな時に何をいつ「パンデミー」と認定するかなど、恣意的、政治的、経済的な側面を抜きにして考えられない。
個人の遺伝情報や健康履歴と同じで、国別、地域別の違いを無視してグローバリゼーションの名のもとに「リスク・ゼロ全体主義化」していくとしたら、それは「健康」だけではなく他の分野にも当然浸透していくかもしれない。