人気ブログランキング | 話題のタグを見る

L'art de croire             竹下節子ブログ

ユーロ杯でイタリアが優勝

7/11 は、サッカーのユーロ杯の決勝イングランド対イタリア戦がイングランドの本拠地ロンドンで開催された。イングランドのサポーターのフーリガンの行動のさまざまな逸脱はすでに有名だし、もう半世紀以上も優勝していないイングランドが「ホーム」で優勝するかもしれないというので、ほんとうに、「コロナ禍って何?」「デルタ株の蔓延って何?」「オリンピックの無観客って何?」と思わず言いたくなるような超「密」な熱狂ぶりがスタジアムでも町でも繰り広げられていた。


これはもう「地の利」もあってイングランドの勝利だろう、イタリアチームの方が疲労が激しいようだし、というのが大方の見方だったけれど、私はなぜか、イタリアが勝つだろうと思っていた。別に予知能力が働いたわけではない。

メンタルのレベルでイタリアにメリットがあると思ったのだ。


このような世界トップレベルの試合では技術的にはもう互角チームだらけだろう。

だからこそ地元の熱狂的な応援を受けるイングランドが有利だと思われていたのだけれど、以前にも書いたようにサッカーの試合では、「神頼み」のような心性が大きく働く。


で、イタリアの「神頼み」といえばカトリック。

前日の7/10、中南米の「コパ・アメリカ」杯の決勝で、ホームで負けたことのないブラジルチームとブラジルの首都リオ・デ・ジャネイロで戦ったアルゼンチン・チームが28年ぶりに優勝した。

アルゼンチンはローマ教皇フランシスコの祖国で教皇がサッカーファンであることもよく知られている。

その教皇は、腸の手術で入院中だったが、翌日の11日の日曜日、病室の窓から信徒たちを祝福し大歓声を浴びた。

イタリアは、昨年コロナ禍のヨーロッパ株で最初に大打撃を受けて、聖職者の犠牲も大きく、復活祭も公開ミサができないという惨状で、もともと危機的だった経済的ダメージもさらに深刻化して、悲観的見方が広がっていた。

そんな中で、教皇の祖国でカトリック文化圏のアルゼンチンが前日にアウェイで勝利、当日の朝に順調な回復途上の教皇の姿、というのを知ったイタリア・チームのメンタルはさぞや強固になっただろうなあ、と思ったわけだ。

イングランドはロンドンでウィリアム王子一家が観ているなどといっても、さまざまな雑念があって、かえってまとまらないかもしれない。(そんなわけで、私は1-1PK戦でイタリアの勝利、と口にしていたので、その予測を発表すればよかったのに、と言われた。)

サッカーの試合そのものには興味がなく、それにまつわる人間模様やメンタリティの比較に興味があるだけなので、試合の中継も見ていなかったが、深夜どうなったかなあとTVをつけたらPK戦で、イタリアが先行とはいえ、ゴールの向かいがイングランド・サポーターの席なのでこれはやりにくい、と解説されていて、大変だろうなあ、と思った。


だが、イタリアが勝利した。半世紀以上ぶりだという。

フランス人の多くはイタリアを応援していたようで喜んでいた。

やはりカトリック文化圏ということで、ヨーロッパからはイタリア、スペイン、ポルトガル、ポーランドからの移民の歴史が長いし、イギリスとは歴史的にはドイツよりも敵対関係が長かったし、BREXITもあって、イングランドはもうヨーロッパじゃないから、ヨーロッパに負けたんだ、と言う人もいた(今回のフランスが準々決勝であっさりと敗退したのはもう忘れたようだ。そういえば2006年のワールドカップ決勝戦でイタリアの選手に挑発されて頭突きしたジダンの退場なんていう事件もあったっけ)。


イギリスチームのほとんど全員が準優勝のメダルを受け取るとすぐに首から外して不愉快そうにしていた映像には、ユーロ杯全体に対するリスペクトを欠く嫌な感じがしたが、イギリスのPK戦で最後に続けて失敗した3人の選手に人種差別的非難が寄せられたというのももっと不愉快だった。

(ラグビーが大学などを基盤にした「紳士のスポーツ」と呼ばれるのとは対照的だ。)


1998年のフランスのワールドカップが私の初めて身近に見たサッカー大会だったけれど、フランスはその頃からすでに、黒、白、アラブと呼ばれた「多様性チーム」で、二重国籍可能だから、アフリカのチームに参加する人もいるし、いわゆる「混血」の率も多い。その頃の他のヨーロッパのチームは、圧倒的に「白人」ばかりだったけれど、20年を経て、他のヨーロッパチームにも「移民の子弟」が増えてきて、時代は変わったなあと思っていたところだ。

今回のPK戦で最後に「失敗」した19歳の選手はナイジェリア移民の子孫だそうだ。

準々決勝のフランスのPK戦で最後に失敗したのは前ワールドカップのヒーローであるエムバペだったけれど彼を非難する人もいなかったし、人種差別的な言辞はもちろんなかった。

社会の分断が進むフランスだけれど、まだ救いがあるかなあ。


by mariastella | 2021-07-13 00:05 | 時事
<< イヴォンヌ=エメ生誕120年、... アンデス山中の生存者 半世紀を経て >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
2026年 06月
2026年 05月
2026年 04月
2026年 03月
2026年 02月
2026年 01月
2025年 12月
2025年 11月
2025年 10月
2025年 09月
2025年 08月
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 04月
2025年 03月
2025年 02月
2025年 01月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
カテゴリ
検索
タグ
最新の記事
ドイツ移民の運命について
at 2026-06-11 00:05
ドイツからの移民の歴史
at 2026-06-10 00:05
聖霊降臨祭のミサ
at 2026-06-09 00:05
マイノリティのキリスト者殉教
at 2026-06-08 00:05
オディールの葬儀ミサと埋葬
at 2026-06-07 00:05
オディールの帰天
at 2026-06-06 00:05
二つのフランス
at 2026-06-05 00:05
天気予報
at 2026-06-04 00:05
何を着ていくか
at 2026-06-03 00:05
日本で買った本、もらった本など
at 2026-06-02 00:05
最後の24時間で食べたもの
at 2026-06-01 00:05
谷中で
at 2026-05-31 00:05
東京藝大美術館へ 「日曜美術..
at 2026-05-30 00:05
菖蒲池、心斎橋、代々木上原
at 2026-05-29 00:05
西宮の「聖イエス会アンネのバ..
at 2026-05-28 00:05
シスター相川との再会
at 2026-05-27 00:05
「がんこ高瀬川二条苑」
at 2026-05-26 00:05
ソラリアホテルと高瀬川
at 2026-05-25 00:05
京都御所
at 2026-05-24 00:05
里山十帖 その2
at 2026-05-23 00:05
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧