定期的に回してもらっている英語雑誌に新しいものがあった。
初めて目にするものだ。この2種類のバックナンバーを去年のものから。
The Author 誌は、イギリスの作家クラブの雑誌で、The Dramatistはアメリカの演劇人ギルドの雑誌。現役劇作家のジョン・ローガンという人の財団が設立したギルド(同業組合)の雑誌だという。
私はNYに住んだことがないし、ブロードウェイの芝居を観たこともない。それでも、去年のNYを襲ったコロナ禍のニュースはもちろん見聞きしていたし、ロックダウンでブロードウェイがゴーストタウン化した映像も目にしていた。
劇場やコンサートホールが全て閉鎖というのはフランスも同じだった。その中での映像配信などで努力するアーティストたちに敬意を表しながらも、フラストレーションは溜るばかりで、この6月からささやかな「劇場復帰」をささやかながらやることの歓びをかみしめていた。遥か彼方のブロードウェイに思いを馳せることなどない。
ところが、この演劇人ギルドの季刊誌の夏の号の巻頭コラムを読んで、胸につまされる思いだった。裏表紙はこれ。
一年ぶりにブロードウェイ1501番地のオフィスに戻ってきた編集長が、当時のままほこりを被っている机、ポスター、予定表などを目にした。窓から眺めるタイムズスクエアも閑散としている。時が凍りついたようだ。その哀しみが痛切に伝わってくる。まるで、地震やテロや戦争の被災地に足を踏み入れたかのようだ。実際、9.11のトラウマも蘇る。もちろん、休演だけでなく持ちこたえられずに倒産した小劇場なども数知れないし、転職を余儀なくされた演劇人も少なくないだろう。「戻ってくることができた」感慨の中には、そのような多くの同業者の「無念」が渦巻いている。キャンセルされた無数の演目、その中には復演不可能なものも多いことだろう。役者、演出者だけでなく多くの技術スタッフの中には、実際にコロナに斃れた人もいるだろうし、大切な人を失った人もいるだろう。筆者Joey Stocksは、演劇人を鼓舞する一般論でなく、自分自身に希望と方向とインスピレーションを与えてくれ、と読者に呼びかけている。
So much mess to clean up, y'all. But like Times Square after New Year's Eve, you gotta start somewhere.Grab a broom? Sweep. Grab a pen. Write.You still give me hope, direction, and inspiration.
「Please recycle, upcycle」とも。
コロナ禍でできなかったいろいろなこと、未完成のまま過去の遺物になってしまったさまざまなプランなど、リサイクルことも、アップサイクルことも可能かもしれない。
日本の演劇界にこういうギルド雑誌はあるのだうか。The Author誌の方も、著者協会の季刊誌で羨ましいような充実した内容だ。日本の「ペンクラブ」は国際ペンクラブの支部だけれど、その他にこのような雑誌はあるのだろうか。フランスにもさまざまな文化財団、メセナはあるし、国の支援も大きいけれど、ブロードウェイを介して演劇人の哀しみが伝わってくるような、こんなテキストのフランス版はこの期間に目にしたことはない。演劇人の怒りや反抗の声の方が高かった。
なんだかブロードウェイに行きたくなった。