昔のオリンピックでは気にならなかったのだから、ひょっとして最近定着したのかもしれないけれど、今回のオリンピックのニュース(フランス語)で気になったのが、柔道の女子選手を指す「JUDOKATE」という言葉だ。「ジュードカット」という感じの音。ヨーロッパ選手権と世界選手権を二度ずつ制覇し今回初めて金メダルを得た女子柔道選手がいるせいで、ジュードカットという言葉が何度も繰り返されて、違和感があった。
最近のフランスでは男性名詞の職業に就く女性のために女性形をわざわざ作る傾向がある。
フランス語を使うカナダやスイスの方が徹底しているようなのだけれど、フランスもだんだんそうなってきた。たとえば、「市長」はmaire(メール)だけれど女性市長はmairesse(メレス)となって、なんだか変な語感だ。ベルギーではどちらでも公式に使えるそうで、フランスでは公式にはメールのままで「ル・メール」か「ラ・メール」かで、冠詞を男性系、女性形と使い分けることになっている。
もちろんアクター(俳優)の女性形アクトリスのようにもともと使い分けられているものもあるけれど、女性が不在だった職業名はいろいろ工夫して女性形が作られる。
一番簡単なのは発音は同じのまま綴りの最後にeを加えるやり方だ。
でも、judokateって…。そもそもjudoka が 「a」で終わっているからイタリア語の連想でいくとそれ自体女性名詞っぽいのに。なぜわざわざ t を足すのかと思っていたら、弁護士avocat(アヴォカ)の女性をavocate(アヴォカット)と呼ぶようになった連想からだそうだ。(でもavocatにはもともと発音されない t がついているのだけれど。)
(ちなみに女性マンガ家はmangaka femme、フランス語ならdessinatrice de BDとかになる)
柔道家の「家」は、別に男女の区別がないと思うけれど、「家父長」というくらいだから、「家」には男という含意もあるのだろうか。そう言えば日本語でも「女流画家」とか「女流作家」という言葉がある。スポーツ系なら「女子選手」、職業なら「女性議員」「女性技師」など、ニュアンスの差もある。「婦人」は「職業婦人」などという言葉が昔はあったっけ。
フランス語で、日本語に変な子音が足されている例としては東京の住民とか東京の形容詞である「Tokyoïte(トーキョイット)」という言葉が昔からある(東京に関連するミネラルの名前でもある)。
母音で終わる外国語の接尾辞は難しいのだろうか。イタリアはイタリアンだと日本語からなら自然に思うけれど、フランス語ならイタリアは Italie (イタリー)で、形容詞のItalienはアンでなくて鼻母音だ。
イットという接尾辞は、鉱物や元素以外では「炎症」を表すもののグループが一番多いので、トーキョイットなどというと、なんだか「東京炎」と連想してしまいそうだ。(実際、猛暑とオリンピックと緊急事態宣言で東京は炎上しているかもしれない。)