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L'art de croire             竹下節子ブログ

武道と差別と自然体

GQ Japanの No213 に、内田樹さんが日本が世界に誇れるものとして「武道」をとりあげ、その「道」は到達点を定めて完結するものではなく、かなたに消失点があって永遠に続く精進だ、という内容を挙げていた。それには同意するけれど、それは「日本以外」に対する「日本」のすばらしさというより、今の世の中が二本を含めていっせいに、経済成長からコロナ対策までの全てを「数値目標」として掲げてしまうことへのアンチテーゼだと思う。

日本の武道などの「道」だけでなく、多くの宗教における解脱の道、悟りの道、精神修養、禁欲行、祈り三昧、黙想行など、本来はみな、到達点はこの世で測られるものではなく、生死を超えたパースペクティヴを持っている。


GQの特集は、「世界に誇れるメイド・イン・ジャパン」で、数値への無力感にとらわれる日本人への「質」の信頼を応援するものだけれど、日本人って、「数値」以外の鬱屈がある気もする。コロナ・パンデミックだって、公平に「数値」だけみたら、「欧米」の10分の1の「被害」しか出ていないし、罰則付きロックダウンもないのだから誇るのかと思ったら、「欧米」並みの恐怖を煽って、「欧米」並みの経済損失を出している。「同調圧力」は突出している。

私は「日本人」が「欧米」っぽいものに向ける自虐も嫌いだし、それとセットになっている「少数者」差別も嫌いだ。それがセットになっていることを自覚しないで、優越感と劣等感と本音と建前との底に、フラストレーションがあって、それが妙なエネルギーにすらなっている。


最近、こういう記事を読んだ。なんだかすごく納得する。

日本語とフランス語で普通のネット・サーフィンをしていても、特にディープなところに誘導されなくても、日本語では普通にポルノ風の画像などが出現したりするからだ。



日本人の差別意識については、最近、Literaの記事に衆院選投票を呼び掛ける芸能人の一人に対する「差別」言辞への批判が載っていたのが目についた。そこにこう書いてある。


>>>また「日本国籍じゃない」「選挙権あるのか」という反応も差別まるだしだ。ローラはバングラデシュ人の父と、ロシアと日本のクォーターである母との間に生まれ、幼少期の数年はバングラデシュで過ごしているが、生まれたのは日本でまた日本で長く育ち仕事もしてきた。プロフィールなどで国籍について言及はしていないが、日本国籍を有していても不思議ではない。

 何十年も前に日本国籍からアメリカ国籍になっている人を「日本人がノーベル賞」などとはしゃいでいたくせに、なにを言っているのか。多様なバックグラウンドを持っているというだけで、反射的に「日本人じゃない」とか「選挙権あるの?」などとあげつらうのは、「純血主義」「ハーフ差別」以外の何ものでもないだろう。<<<


これは真鍋淑朗さんのことだろうけれど、これについては彼のノーベル賞が発表された10/6に起こった私のブログの異変を思い出す。この日のアクセス数が日頃に比べて突出して増えていた。こういうのは誰かがツィートして広がった、という場合だ。いつも予定稿を投稿しているので、何を書いたんだっけと調べてみたけれど、特別なテーマでもなかったので不思議だった。


後で、ブログ内のアクセス・ランキングというコーナーを見て初めて気がついた。

それがこういうものだったのだ。もう4年も前の記事だ。


当時の検索結果では普通に日本人学者としか出てこなかったと思う。

それにしても、こうして見ると、日本人って、国籍うんぬんよりもやっぱり出自(両親も日本出身の日本人)と「見かけ」なんだなあ、と思う。逆に、日本生まれで日本人と同じ「見かけ」でも、両親のどちらか一方が日本出身でないとか、国籍がないとか帰化したというだけで「差別」の対象になることがなくなっていないわけだ。

私は日本よりも長いフランス暮らしなので、しかもフランスは建前のユニヴァーサリズムはともかく生きている国だから、国籍とか人種アイデンティティの感覚は鈍くなっている(65歳以上はコロナのハイリスクだ、というような個人差抜きの年齢という数値差別にはまいっているが)。


同じように、今の日本が経済成長が止まって久しいとか賃金水準がどこそこに抜かれたとか、先進国から転落とかいうタイプの日本での言説にも、私はあまり危機感は持てない。がんばりすぎた後の「成熟」で「停滞」しているのは自然で、「足るを知る」みたいなユルサやヌルサは、それはそれで自然体でいいんじゃないかと見えてくるからだ。

まあ、武道のように精進を積みかさねなくても、「自然体」の中には、放置すると果てしなく落ちたり逸れたりするリスクもあるから、「節度のある自然体」が理想かもしれない。プレッシャーやストレスの裏側でそれを発散するための性的な隠れ家の確保にエネルギーを注がないでもすむように。

自然体で生きられる幸運な人は、様々な理由でほんとうに「足らなくて苦しんでいる」に目をむけたいものだ。


by mariastella | 2021-10-27 00:05 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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