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L'art de croire             竹下節子ブログ

人類のフロンティア展

年末のある日、何十年ぶりかで、シャイヨー宮の人類博物館につきあいで出かけた。
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特別展の「人類のフロンティア」を観に行ったのだけれど、常設展の変りぶりに驚いた。
コンピューター技術の発展で、対話型の画面がたくさんある。

私が最初にここに来た時に、一番衝撃を受けて今も記憶に残っているのは、中国の「纏足」の足だった。それが蝋細工の模型だったのか、フォルマリン漬けの「本物」だったのかも定かではないが、それまで漠然と、纏足は、足をぐるぐる巻きにして成長を止めて、全体としてミニチュアのようにするのかと思っていたのだけれど、実際は、足先が親指だけになっていて残りが変形しているいびつなものだったことにショックを受けたのだ。

何十年ぶりかの常設展示にも、靴の歴史のように、纏足の靴とハイヒールなどが並べてあるコーナーはあったけれど、その中身の実態はもうなかった。

そういう、ある意味での「際物」はもうなくて、「政治的公正」っぽいメッセージが満載だった。
たとえば、こういう像があって、フランス語、英語、スペイン語のどれかのボタンを押すと、この「白い」黒人女性が人生を語り出す。
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子供の頃にセネガルからフランスに来たこと、フランス人と結婚したけれど離婚したこと、昔は離婚に対する偏見があったことなどをいろいろと語る。

興味深いものもあった。「人類、誰が子供を作るのか?」とあって、さまざまな文化の「母」の像が並ぶ。でもこれも、「文化の多様性」メッセージで、人類博物館と少しずれている気がする。
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ルルドの聖母も。
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遺産の継承の中に自分を位置づけるというコーナー。やはり、キリストの磔刑像からインディアンやら仏像やら多様な文化の継承の先に、共和国のシンボルのマリアンヌ像やらシャルル・ドゴール像が掲げられる。
これも、多様なルーツがあっても共和国の普遍主義を人類のアイデンティティにしよう、というメッセージがはっきりし過ぎる気がする。
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グローバル化した世界ではみんなが同じバスに乗って進む。という展示も、フランスとセネガルを結ぶという設定だった。よほど帝国主義を「キャンセル」するメッセージが必要なのだろうか。
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もちろんホモサピエンスへの進化やら考古学の発掘のシミュレーションなどもあったのだけれど、文化の多様性、でもみんな同じ「人類」だという「教育的配慮」みたいなものが印象的だった。


常設展示の入口
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こちらも、人間の限界をどこまで広げたら「人間」のままであると言えるのだろうか、という倫理的な問いかけが満載だった。もちろん最終的には、自然を守り、自然と共生して生きていこうという誘導される。

遺伝子操作によって「理想の子供」を創る、というコーナーもあって、自分の遺伝子に、どのように操作された遺伝子を組み合わせるかで、生まれる子供の目の色や肌の色だけでなく、将来の病気の有無や超能力の付与など選択できるというシミュレーションがあった。やってみたら、かわいい赤ちゃんが生まれたけれど、両耳がとんがっていた。(蝙蝠のような反響定位の知覚能力を付与したからだろう。)

個人的にはこのようなフォークロリックな実物の展示の方が好み。17世紀のスイスのカルメル会で製作された聖遺骨の額。
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博物館の窓から見たエッフェル塔。
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でも、この日、一番印象に残ったのは、帰りのメトロで、クリスマスソングが聞こえてきて、うるさいなあ、今時誰かスマートフォンの音楽をイヤホンなしで流している人がいるのだろうか、迷惑だなあ、と思ったら、メトロのミュージシャンだったことだ。デルタ株の蔓延が続きオミクロンの恐怖が煽られていた時期に、マスク着用が義務付けられているメトロ内で、しかも、結構混んでいるというのに、ピアニカで演奏していた。
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そして、あい変わらず、彼に小銭を渡している客がいるのを見て、なんだか、ほっとした。
私は荷物をもって立っていたので、小銭を出せなかった。それにピアニカというチョイスもちょっと。

第五派でオーケストラでもまたマスク着用義務になっているけれど、去年と違って、歌手と管楽器奏者はもちろんノーマスクで演奏できる。マスクをつけながらヴィオラを弾いている私はなんだか納得いかないので去年のような感慨はなかった。でも、こう言うところにフランスらしさが残っているのはひと安心だ。(下は去年の記事)










by mariastella | 2022-01-07 00:05 | フランス
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