Marie Darrieussecqという小説家が自分の不眠症について『Pas dormir(眠らない)』という本を出した。10年間で3人の子供を産んだことで不眠が始ったという。自分の親が最初の赤ん坊を亡くしたことを訊いていたから、子供の無事が気になったのだ。
実際に眠れているかどうかよりも、睡眠時に不眠の不安を抱くかどうかが不眠症の実態だという。安眠のハーブティー、ヨガ、鍼灸、催眠療法などあらゆることを試したけれど効果がなかった。
睡眠のミトロジーには二種類あって、よく働き、良心の呵責のない義人は安眠するというものと、世界の痛みにより添って、安らかな眠りを得られない悲劇のヒーローというタイプらしい。
彼女は自分の母親から、ほんとうに疲れたら眠れるよ、と言われたことが強迫となった。
睡眠学の精神科医と出会い、彼女の不眠は脳が休まない病気であり、アディクションを形成していることが分かった。
小説家に不眠症は多いが、ポール・ヴァレリーは朝5時に起きて執筆したが、昼寝をする人だった。
不眠症の小説家のトップスリーが、カフカとプルーストとマルグリット・デュラスだそうだ。カフカは自分にはもう睡眠がなくあるのは夢だけだ、と日記に書いている。彼の小説の主人公も安眠を得られない人ばかりだ。
プルーストは喘息で不眠症で拒食症だった。51歳で世を去った時には35kgしかなかったのだそうだ。
デュラスはミシェル・マンソーの『不眠礼賛』という本の中で自分の不眠を語っている。デュラスは不眠症のためにアルコール依存となった。不眠症とアルコール依存を「エレガントに」生きたという。
私は子供のころから「寝つき」が悪くて、「眠れない」ということに罪悪感を持っていた。母に「子供はすぐに眠るものだ」と言われていたからだ。5歳の頃に不眠治療で鍼医のところに行った。寝る瞬間、意識がなくなるのを観察したいといつも思っていたからだ。長い間、不眠について考えてきたので、夢も含めていろいろとコントロールできるようになった。夢の続きも見ることができるし、夢の中で知らない映画一本を鑑賞することもできたし、パラレルワールドに戻ることもできていた。今はそれほどでもないけれど、少なくとも、もう「不安」はないから、不眠症とは縁遠くなった。でも不眠症の人に容易く共感できてしまう。