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L'art de croire             竹下節子ブログ

仏大統領選、右も左も「女性候補」の戦い

3ヶ月後には決まるフランスの次期大統領。

現職のマクロンは候補者となってからはいろいろ制約を受けるので、まだ正式の出馬を表明していない。

で、「中道左派と中道右派」をまとめたはずだったマクロンのせいでダメージを受けた右派と左派が巻き返しを狙って候補を立てているのだけれど、どちらも、女性二人が目立っているのがおもしろい。

前政権党だった社会党からは、現職パリ市長のアニー・イダルゴ、そしてオランド政権の司法大臣だったクリスティアーヌ・トビラが出馬している。前者はスペイン生まれでフランス国籍を中途取得した人だし、後者はフランス領ギアナというか海外地域県出身の黒人女性で、どちらも、日本やアメリカでは想像できない「多様性」を代表している。
でも、彼女らのことを15世紀フランスの救国の乙女「ジャンヌ・ダルク」に例えて揶揄する人もいるのが皮肉だ。
2人とも、ただでさえ崩壊している左派を更に二分していて、世論調査では二人を足しても5%ほどの支持者しかいない。で、待ち受けている「死」に向かって突撃、というのでジャンヌ・ダルクだ、というわけだ。

一方で、右派には、本気でジャンヌ・ダルクをシンボルのように利用してきた国民連合のマリーヌ・ル・ペン女史、二期続けて政権から遠ざけられた共和党から期待されるヴァレリィ・ペクレスという二人の女性がいる。どちらも、マクロンとの決選投票に残る可能性がある支持率をたたき出している。

マリーヌ・ル・ペンは、前回の決選投票前の論戦で弱みを見せてしまったのだが、今回はEUやユーロに関しても過激な発言は控え、極右のレッテルから中道右派というスタンスになろうとしている。これは、極右の掲げるテーマを増幅してポピュリズム路線で人気を得たエリック・ゼムールのおかげだと言ってもいい。彼が、人種差別、障碍者差別、移民排斥など、共和国の建前タブーに触れることをいろいろ繰り出したものだから、マリーヌ・ル・ペンの方が相対的に穏やかで常識的に見えてきた。彼女もそれをキャッチして、うまく立ち回っている。

ヴァレリー・ペクレスの方は、保守クラブ的共和党の男たちに足を引っ張られるリスクの少ない正統的な「共和国エリート」の一員だし、共和党政権で大臣を歴任したし、パリを囲む「イール・ド・フランス」県の知事として実績を出している。女性だからセクハラ疑惑のスキャンダルに巻き込まれる可能性も小さい。

2人とも、左派の「2人のジャンヌ・ダルク」より10歳くらい若いし、スペインや海外県でなくパリ西郊外のブルジョワ地区の出身だ。
それでも、マリーヌは子供のころから極右国民戦線の父親の娘としていろいろなトラウマをくぐり抜けてきた。
ペクレスはもう、ずっとエリート路線。しかも、日本のソニーでインターンをしたとかで日本語も操る知日派なんだそうだ。マリーヌ・ル・ペンと差異化するために中道を路線を強調している。まあ、中身は新自由主義エリートのマクロンと変わらないのだけれど。

ペクレスが決選投票に残れば共和党が政権を取り戻す可能性はある。
マクロンの党は、政治経験のない「素人」がマクロンのファンクラブのように新しい中道を期待して集まった人が主流だから、政党としては根づいていないままだ。マクロン政権の前半の首相だったエドゥアール・フィリップがマクロンを支持するとして新しい政党を立ち上げたが、5年後には彼の方がチャンスがあるかもしれない。

どう転んでも、今のフランスの政治システムでは、諸問題の根本的な解決や改善は難しい。
逆に、どう転んでも、フランスの「建前」が生きている間は、「トランプ」現象のような逸脱も起こる率は少ない。

2月初めだと言われる正式の「出馬」表明後のマクロンの、ぎりぎりの選挙戦略がどういうものなのかをひとまず見てみよう。



by mariastella | 2022-01-27 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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