双子の科学者としてずっと有名だったボグダノフ兄弟が年末年始に相次いで、コロナに感染して死んだ。
彼らのテレビ番組は見たことがないけれど、この2人は私にとって重要な著者であるジャン・ギトンと共著で神と科学についての本を出しているので、ずっとなじみだった。訃報に伴って、七十代になった
最近の写真を見て怖くなった。もともと特徴のある風貌だったけれど、これは異様すぎる。
亡くなってすぐは、さすがにスキャンダルめいた報道はなかったけれど、1/29に放映されたこのドキュメンタリーを視聴して、あらためて、この2人のあらゆる意味での「怪物」ぶりと、フランスのエリート・サークルについて考えさせられた。
彼らの祖母がヨーロッパの有名貴族であることは知られている。でも、ぶっ飛んだ人で、当時白人との結婚も許されていなかった黒人男性との間にアメリカで一人娘を生んだ。
それがボグダノフ兄弟の母だ。母はハーフ、兄弟はクォーターということになる。
祖母は彼らをパリの社交界に送り込んだ。彼らはすべてのマナーを身につけ、多くのセレブと交流した。
フランスの社交界というのは、貴族という身分が公式には存在しない「共和国」独特の、人種や国籍も問わない疑似貴族がネットワークを築ける独特の場所だ。そこにはもちろん新興マネー貴族も芸能人も入ってくる。
豊かなコネ、人脈が形成される。
テレビ出演に誘われた後、話がうまく、見た目も美青年でしかも双生児、最初はテレビでバラエティの「いじられ役」も受け入れるほどの余裕でだった二人は、その後、科学番組(SF解説)の人気パーソナリティとなった。
ところが、私も発売後すぐに読んだジャン・ギトンとの共著の著者略歴に、天文学の博士号を持っているとの学歴詐称があったのを暴かれた。普通ならここでキャリアは断たれるところだが、この2人はなんと、2人そろって、それから10年近くかけて、本物の博士号を取得するのだ。もちろん、各界に数々のコネがあるのは事実で、助けの手も差し伸べられたろうが、ほんとうに国立大学の博士号を取得してしまうのがすごい。(一人は二度目に合格)
誰からも好感を持たれるような雰囲気と話し方と明るいキャラの2人だけれど、「老い」への恐怖があったようで、ボトックス依存症になってしまったらしい。途中で一人は最後のパートナーにありのままでいいのだと言われて、整形を中止したので整形というより「変形」がとまった。
多くのセレブの友に囲まれていたけれど、だれも、顔のことについてはタブー状態だったようだ。
コロナにしても、ワクチン未接種だったけれど、70代にして持病もなく健康で、自己免疫に自信を持っていた。去年の秋からのデルタ株にやられたらしい。問題は、発症してもなかなかそれを認めず、入院を拒否したことで、もしいち早く手当てしていたら、一年前と違っていろいろな治療薬も試すことができたかもしれないのに。
それにしても、これだけ社会的な地位と名声と豊かな人脈と家族の絆がある人が、これほどまでに「見た目」への強迫観念にとらわれて崩壊に至るという事実に慄然とする。しかも、「整形に失敗した」というような意識すらない。
ドキュメンタリーの中ではマイケル・ジャクソンと比較している発言もあった。
ほんとうにユニークな人物で、それが2人そろっていたのだから、ある意味で稀有なエンターティナーの同時代人が旅立ったのだろう。
日本語で検索したらこういうのがあった。