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L'art de croire             竹下節子ブログ

自己啓発とコーチング

この本は、自己啓発ビジネスにかかわる多くの人にとって「不都合」な本だ。

あらゆる種類のセミナーやコーチングの実態にメスを入れている。

日本のwikiの解説でコーチングを見ると、次のような解説がある。


促進的アプローチ、指導的アプローチで、クライアントの学習や成長、変化を促し、相手の潜在能力を解放させ、最大限に力を発揮させること目指す能力開発法・育成方法論、クライアントを支援するための相談(コンサルテーション)の一形態。」「自己啓発セミナーや組織開発同様、害悪をもたらしうる危うさ、無資格のライフ・コーチへの疑念の報道も増加した。しかし、そもそもコーチには資格も条件もない」


「コーチビジネスは、ライフスタイルやビジネスチャンス程度にしか考えられず、無批判に受け止められ、養成講座が流行するといういびつな状況となっている。」

アメリカでは、「在宅ビジネスを求職する消費者に対して、電話で仕事が可能なコーチングの詐欺的な商法が横行」し、「コーチ養成会社が乱立」 「資格商法」がはびこる、


などとあり、その元は自己啓発セミナーであるという。


「自己啓発セミナー」とは、同じく日本のwikiでは、次のようにある。


「自己を知り自己の可能性を実現する、コミュニケーション能力を養うなどと謳われる民間のグループ・セラピーの一種である。「自己啓発」を目的にする。1970年代以降、アメリカで大流行した。心をテクニックでコントロールできると考え、意識変容を目指し、自己責任を強調する。主に私企業によって有料のサービスとして提供される。セミナーの質を保証する公的な資格制度などは存在しない。」「自己啓発セミナーは通常講師側も多人数、生徒も多人数で行われ、講師と生徒が11の場合コーチングと呼ばれる」


「啓発」というと啓蒙と同じで「啓く」という語感だが、ビジネスとしての「啓発」やらコーチングのほとんどはむしろ「反知性主義」がベースになっているのが分かる。


「自己」どころか、「あるべきモデル」を設定して、「多様な個人」をそれに向かって誘導する洗脳のような戦略がはりめぐされているのだ。


その「あるべきモデル」とは、あらゆる分野が対象になる。

企業の成長戦略やいかにして儲けるかなどだけではなく、受験、教育、就職、男女関係、健康、美容、料理、運動、減量、筋トレ、節約、住まいのインテリアや、断捨離、ライフスタイルまで、さまざまな分野で、「コーチ」の提供する理想のモデルを目指して「型」にはめられていくのだ。それが達成できない時の失望が大きかったり、達成されたとしても、そこに「本来の自由な自己」の姿は見つけられない。


日本語でパーソナル・トレーナーと言えば一対一のコーチングだが、フランス語の「自己開発」で使われる「自己」personnelというのは、三位一体のペルソナを人間に応用した概念で、「自己決定のできる個人」を示す。

だから、あるべき姿やコーチの方針に従って目指されるのはpersonnelどころかその反対のimpersonnel(非個人的で誰にでも通用する)だと著者は言っている。

必要なのは、自分自身で自分の生き方を問い続け試行錯誤して生きる哲学だ。


私は個人的にコーチングなどに興味がなかったけれど、自己啓発系の書籍が至る所にあるのは知っているし、何よりも、今は、ある種のyoutuberとかインフルエンサーと呼ばれる人がネット上で、「カリスマ」モデルを提供している現象について違和感を覚えていた。

こんなものがはびこっているから、そこから外れたと思った人が生き難さを覚えたり、鬱状態になることがあるのだ。

「カリスマ」と「信奉者」「ファン」の間にはある種の依存関係があって、「カリスマ」は自分の優越と支配力を信じるようになり、信奉者は、批判精神抜きにそのモデルに憧れるようになる。

「これまでのあなたの生き方は間違っている。」「これからはこのように考えてこのように生きなさい」と言われることに唯々諾々と従がうようになるのだ。

これは「覚醒」や「解脱」を促すカルトの心理学の中にもある。


この本はコロナ禍以前に出されたものだけれど、このベースがあったことと、先進国のコロナ対策におけるアンバランスな絶対主義の蔓延とは大いに関係がある。


それについて考えをまとめているところだ。





by mariastella | 2022-03-10 00:05 |
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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