ある修道院の向かいに新しいパン屋ができて、そこでは昔ながらの手作り菓子も売っていた。ひとりの修道士は、子供の頃に好きだった菓子を見て、どうしても食べたくなってたまらなくなった。毎日の祈りや黙想にも雑念が入り、どうにもならなくなったので、修道院長に相談した。院長は小銭を与えて、その菓子を買って食べるように言った。店に出かけて夢にまで見た菓子を手に入れてほおばった修道士は至福を感じ、これで気が済んだからもう煩悩に悩まされなくて済むと思った。
ところがそれは長く続かなかった。修道院の仕事をしている時も、夢の中でも、菓子の美味さばかりが思い出された。罪悪感と恥の意識で憔悴して、再び修道院長に打ち明けた。修道院長は少し考えて、こうアドバイスした。
「店に行って、もう一度その菓子を買って食べなさい。でも今度は、じっくり味わって食べ、一口ごとに、神さまと、菓子を作った職人に感謝しなさい」
修道士は悩みから解放された。
(MartinSteffensの《Petit traitéde la Joie》Poche Marabout のp162-3 より)
何かを所有したい欲望に駆られて、手に入れたとしても、欲望は止まらないということはよくある。
手に入れたものと自分との関係を考えない一方的なものだからだ。
貪るのではなく、味わう。そして、感謝する。
人生のいろいろな場面でも納得できるアドバイスだ。