2021年の6月に、コロナ禍での日本やヨーロッパの対応を振り返って「疫病」を前にしたスピリチュアリティについて考える本『疫病の精神史--ユダヤ・キリスト教の穢れと救い』(ちくま新書)を出した。
4 月、今年の日本赤十字看護大学の入学試験に、その本のP172-187が引用されたということで日本著作権教育研究会から連絡があった。
それはフランス王の中央集権的な疫病の関わりなどを概観した場所で、それが「看護大学」の入試に使われたということに感慨を抱いた。
その前も東京経済大学の入試に同じ本が引用されたのだけれど、それは「終わりに」の結論部分で、分かりやすい。設問もざっと見てみたけれど、五択の中から正しいものを一つ選ぶというもので、本文を読み返さなくても、大体見当がつく。
日本赤十字看護大学が引用した部分は、量も情報も多いうえに、
設問は、
…に関する筆者の説明として正しいものはどれでしょう。
とあって、a b c の三択がある。
ところが、選ぶのは1-8までとなっている。
a、b、c、ab、ac、bc、abc 、該当なしの8種類なのだ。
こんな形ははじめて見た。
じっくり検討したわけではないけれど、こんなに選択肢があるなら、本気で読み返す必要がある。
突然、もう半世紀近く昔に、「東大学力増進会」という多分中学生の塾のようなところの夏期講習か何かのために「国語」のテキストを作ったことを思い出した。
私はいわゆるアルバイトをしたことがない。
でもその時は、両親の銀婚式だった。
兄は留学して不在だったので、私が何かをプレゼントしようと思ったのだ。
でも私の自由になるお金はすべて親の金だった。
子供が母の日に小遣いで何か買うのではあるまいし、結婚して25年にもなる親の子供が親の金でしかプレゼントできないのはいくらなんでも、ということで、生まれて初めてのアルバイトをしたのだ。ワープロもない時期、どうやってテキストを作ったのか、引用作品の著作権はどうなっていたか、など、もう何も覚えていない。テキストの選択や設問の出来に自分で満足したことだけ覚えている。
得た金は3万円だった。半世紀近く前だから、悪くない。
それでリビングの壁時計を両親に贈った。一番いいものでも2万円で買えたので、ダイニング・キッチン用にもう一つ、1万円の壁時計を買った。
どうして時計ばかりだったのかもう覚えていない。多分母が、そろそろ時計を買い替えなくては、と言っていたのだろう。その時計は上等なものだけあって丈夫で、その後両親が2度転居した時もずっと役目を果たしていた(もし壊れていたとしても母は捨てなかっただろう)。金婚式の時は、私にも収入があったけれど、「思い出旅行費用」を贈呈した。
フランスで、複数の友人たちが、金婚式のお祝いとして子供たちから「両親のヴェニス旅行」をプレゼントされていたのを聞いた時、私も親に費用でなくパッケージ旅行をプレゼントするべきだったなあ、と思った。
今の世代は、離婚家庭、非婚家庭、単身親家庭など普通にある。
両親に感謝を示す機会を与えてもらえた幸運をあらためて思う。