予定稿を差し替えて、またウクライナ情報のメモ。
これまでウクライナ出身やウクライナに住んでいる知識人や作家、地政学の専門家やら軍事専門家、欧州やロシア史の専門家などの分析をいろいろ聴いてきたけれど、スポーツ・ジャーナリストの話を聞いてなるほどなあと思ったことがある。
その人は、特にサッカーの国別対抗戦の取材でこの15年にロシアに60回、ウクライナに40回の出張取材をした。彼は2012年のサッカーのユーロ杯でドネツクを訪れた時の驚きを覚えている。ドネツクは今回のロシア侵攻の大義に掲げられている親ロシアのドンバス地方で2014 年以来独立を謳っている「人民共和国」だ。
で、2012年にドネツクでサッカーのロシア-ウクライナ戦(予選か本戦かは確認していない)があった時、スタジアムはほとんどがロシアを応援していたというのだ。
サッカーの国際試合は、誰でもゲーム感覚で「自分の国の旗のもとに戦うチーム」のサポーターになる「スポーツお祭りナショナリズム」の舞台だ。
そんな場所でのロシア声援は、当時のドネツクで親ロシア派70%だったことを実感させる。ところが、今回ロシア軍がドネツクの親ロシア派を解放するため、などという題目で侵攻して以来、親ロシア派はあっという間に20%に減ってしまった。
スポーツ観戦で盛り上がれるような生活の場を奪われるような事態では、人は侵略者と敵対するという普通の感情で、皮肉なことに今のドネツクはウクライナの他の地方と変わらないくらいにナショナリズムで連帯しているという。
経済的、社会的理由もある親ロシア派は、戦禍を避けてロシアに亡命している。
これでは、停戦後のロシア軍は、「反ロシア」住民ばかり抱えることになるのではないだろうか。戦争や危機に際しての集団心理を見誤ったということだろうか。
(そういえばこれを書いている3/20の前夜ラグビーの英仏戦があり、フランスが勝ったということでフランス人はみな機嫌がいい。疑似戦争も人を一体化させる。)
実際、現状をどこから分析するかに適当なカーソルは今のところ存在しない。
歴史がドアから入ってくるのでなく窓から侵入してくるとき人はどう応対すべきか分からないのだ。
ジュピターやナポレオンを気取るマクロンは、ヨーロッパの他の国に侵攻するナポレオンがロシアに攻め入ったり、英墺スウェーデンなどの連合軍を敵にしたことは無視してエリゼ宮の執務机にゼレンスキーの写真を置くなど対ロシア連合気取りでいる。フランスの軍事力の栄光を讃えるアンヴァリッドも凱旋門もパリの観光の目玉だ。
フランスでは、テロリストとの「戦争」、新型コロナウィルスとの「戦争」の次にヨーロッパ内で火が付いた「ウクライナ戦争」…どんな「戦争」でもそれによって「偉大さ」を誇示する勢力や医薬・軍事産業のように厖大な利権を得る層が跋扈した。
最もロシアはフランスのことなど歯牙にもかけていないだろう。
唯一の「敵」であるアメリカが、トランプ大統領の落選を信じないプアホワイトらによる連邦議会議事堂乱入、アフガニスタンでの失敗、BLMで3ヶ月も続いた暴動状態、などで揺らいでいるのを見て「好機到来」としたのだろう。
ナショナリズムとアイデンティティとが別物だということを人はしばしば忘れる。