ホロスコープの不思議前はそうでもなかったけれど、この頃、普通の新聞や雑誌にも当然のようにホロスコープや今日の運勢、今週の運勢、今月の運勢などが載っていることへの驚きが強くなってきていた。 フランスではほとんどが生まれ月の星座による占星術ベースだが、ネットで見る日本の雑誌では生まれ年の干支や五星占いやらヴァリエーションがたくさんある。ラッキーカラーやラッキーアイテムも示唆されている。 同じ人向けの占いでも掲載媒体によって「運勢」が違うこともあるし、うっかり別の星座と間違えて読んでも、納得のいく内容だったりする。すべての人の運命が12種類そこらで予測できるわけもなく、なんとでも取れる無難なアドヴァイスというのが定番だ。 私は、予知能力のあるという人が特定の個人を前にして繰り出す言葉には好奇心全開のタイプなのだけれど、なぜホロスコープがあれば目を通すのだろう。 ポジティヴなことが書いてあればなんとなく元気をもらえるし、ネガティヴだと無視することにしているものの、時々、そのアナクロニックな記事に愕然とする。ホロスコープの記事に目を通す人のほとんどは、私もそうだが、そんなものを信用していない。星間距離を無視した「星座」という恣意的な括りに意味がないことは承知しているし、AIにだって書けるだろうという程度の内容しかないことも分かっている。 それなのに、21世紀の今の「先進国」でも、宗教や民族に関係なく「生まれた日」を天空と結び一生をガイドするという壮大な「お話」が生き残っているし、それなりのニーズがあり、誰からも「そんな非科学的な記事を載せるな」というクレームがつかない(多分)。 まあ日本なら、正月にはあちこちの寺社を回って一年の無事を祈願したりおみくじを引いたり、安産用、受験用など「評判」の高い寺社に絵馬を奉納したりする「行動」も続いているから分かるけれど、フランスのように政教分離がイデオロギーにまでなったり、「宗教の無知蒙昧」を弾劾、根絶する「啓蒙主義」による近代化があった国でも、ホロスコープが普通の「消費財」として通用しているのはなぜだろう。 フランスのような国では、主として旧植民地からの移民を通して広がったムスリムによるイスラム教の実践やら、ある種のイスラム圏から送り込まれる過激派イマムが説教するモスクがテロリストの温床になったという事情もあって、今も、いろいろな「聖典」や「教義」の決まりや教えを「非近代的、非科学的」であると批判する意見は十分存在する。そのあおりを受けて、今では「大多数の日本人の神仏帰依(特に冠婚葬祭などの通過儀礼として受け継がれたもの)」と同様でしかないキリスト教やカトリックへの締め付けまで強くなった。 それなのに、ホロスコープ? 完全理系の人も、完全非宗教、無神論の人も、あれば普通に目を通している。信じていないのに、存在を受け入れている。 時々、ヨーロッパの王室を見ても時代錯誤にくらくらすることがある。王様とか女王様とか王子さまとか王女さまとか、中世なのか童話かアニメなのかという称号を掲げて、必要とあらば王冠や王笏を身につける世界が「普通」に残っているのだ。 もちろん「立憲君主制」などのレトリックや制度が工夫されて別のシンボルも政治的に付与されているわけだけれど、よく考えると不思議だ。 けれども、今は、それらが「無知蒙昧」「非近代的」「非科学的」などではなく、混沌とした時代に必要なユートピアの変形なのだと思えるようになってきた。非合理、不確実なこともまとめて取り入れることは、歴史や地理の条件を超える「想像力」の問題なのだ。 戦争や疫病の絶えなかったルネサンスの時代には、それらの混迷こそが、知性と想像力とを結ぶ「創造力」を刺激した。モンテーニュも、過ぎたる確信は(知性を、真実を?)殺す、と言っていた。 自分の確信や信条と異なるものの侵入によって「知の器」が溢れるのを肯定する余裕こそが、世界とつながるユマニストのポエジーであって、現実を超える何かともつなげてくれるものなのかもしれない。
by mariastella
| 2022-05-16 00:05
| 雑感
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