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L'art de croire             竹下節子ブログ

20世紀神話の終焉は福音か その5

Q : 著書の『大きな物語』の中で、ポール・エリュアールの言葉を引用していますね。1950年にスターリンの「愛の脳」を賛美したものです。コミュニズムに関してここまで目をくらまされてしまったことをどう説明したらいいのでしょう。

A : 信仰について考えれば手っ取り早く説明できます。心は、理性があずかり知らない別の理性を持っているということです。
当時の文脈においてはソ連はすばらしい「成功」を修めていたということを忘れてはなりません。過去には農地ばかりだったようなテリトリーに、ダムや運河や橋が建設され、世界有数の工業地帯が出現したのです。何もないところに大産業都市を生み、五ヶ年計画ごとに達成された目覚ましい数値が世界中に喧伝されました。
それらすべてが、人々の解放と絶対自由と結びついていたのですから、魅惑的だったのは当然です。

Q : これらの大きなストーリーが消滅した後、何が残っていますか?

A : 人類学者なら「構造定数」が残っていると言うでしょうね。人はいつも、このタイプのストーリーを産み続けるということです。20世紀の「大きなストーリー」が破綻したのはどちらかというと良いことでした。それらは、一つの「大義」のためにすべての人々を動員し巻き込む装置のようなものだったからです。
けれども、神の摂理主義の終焉と同じように、その後に出現する空洞に、別のストーリーが生まれる余地ができます。

Sekko : 1950年には生まれていなかったけれど、1960年頃の記憶では、日本の普通の子供たちにも「ソ連」は別に悪いイメージではなかった。アメリカとソ連、アイゼンハワーとフルシチョフという「二人のハゲたおじさん」が対になって「世界」を支配しているという印象だったのを覚えている。その後、「西側」の多くの知識人がコミュニズムに魅せられては幻滅して離れていくという構図が定着していった。彼らの「メアクルパ」はそれぞれ特徴があって興味深い。

Q : これらの大きなストーリーが消滅した後、何が残っていますか?

A : 人類学者なら「構造定数」が残っていると言うでしょうね。人はいつも、このタイプのストーリーを産み続けるということです。20世紀の「大きなストーリー」が破綻したのはどちらかというと良いことでした。それらは、一つの「大義」のためにすべての人々を動員し巻き込む装置のようなものだったからです。
けれども、神の摂理主義の終焉と同じように、その後に出現する空洞に、別のストーリーが生まれる余地ができます。
20世紀が終わってからは、断片化した各種の「・・イズム」が何とか人々を動かしている状態です。その中には、現在SNS上で広がるコンプロティズム(陰謀論)もあります。隠れた力の存在によってすべてを説明しようとする陰謀論は、宗教を立ち上げる一つのやり方です。神のない宗教、悪魔のいる宗教というわけです。

Sekko : これがこのインタビューのまとめのようだ。陰謀論もそうだけれど、今のいろいろなポピュリズムは「大義名分」を掲げて人々を煽動、動員、強制に向かうわけではないという意味では確かに、ナチズムやコミュニズムより「まし」なのだろう。それでも、プーチンが「大ロシア」を掲げていたり、どこの国でもナショナリズムを煽る極右がはびこんでいたり、歴史修正主義者が生まれたりなどの動きにおいて、その燃料となるのは「仮想敵」のようだ。

「私」と「私以外」が対立するのでなく、「私」と「私たち」が補完的であるような世界のとらえ方をしない限り、「平和」は訪れない、とあらためて思う。


by mariastella | 2022-06-18 00:05 | 歴史
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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