『家族を想うとき』の翌日に韓国映画の『パラサイト』を観た。
カンヌでも、オスカーでも受賞した話題作で、当時すでにいろいろ読んでいたので、なんだかもう観たような気になっていたのに、コロナ禍や軟化で見損ねていたらしい。超有名で、日本の『万引き家族』の後のカンヌ受賞であり、両方とも「貧困家族」がテーマなのでいろいろ話題になった。ケン・ローチも同じ頃で、『ジョーカー』も同じ頃。日本、韓国、英国、米国と、貧困テーマの社会派エンタメとはいえ、創り方もお国柄も全く違うのは興味深い。
これもネットで今回改めて検索してみたらこんなに詳しい記事があった。
韓国映画へのコメントはさすがに日本人による記事の考察が的を得ていると思った。「台湾カステラ」のブームなんて私は全然知らないし。
確かに、シナリオと言いカメラワークと言い、圧倒的な名人芸で構成されている。
前日観たケン・ローチの作品と同様、家族の絆が強いのは救いだが、ケン・ローチの場合は、労働者を搾取する側の「悪役」ぶりがはっきりしていたけれど、この作品では、「富裕層」もまた素直で、貧困家族のバイタリティの犠牲者になっている。また「貧困」と言っても、「下には下がある」というストーリーになっていて、実にうまくできているのだけれど、格差の拡大に伴う葛藤、羨望、嫉妬、などを突き抜ける人間性みたいなものが欠落している感はある。
そもそも『万引き家族』も『パラサイト』も、家族(または疑似家族)がチームワークを組んで「詐欺」や「万引き」などの違法行為をしているわけだがそれに対するモラルの問いかけはない。(ケン・ローチの作品では息子が万引きをしてしまうがそれが両親に与える衝撃は大変なもので、社会の不正を暴いて正すには犠牲者の側にも一定のモラルがあるという前提がある。)
また、ウクライナ戦争が続く今の時点でこの映画を観ると、韓国の富裕層が北朝鮮のミサイルをおそれて邸宅の地下深くに巨大なブンカーがしつらえていること、そこで何年も暮らしている人がいることなどに、リアリティを感じてしまい、妙な気分になってしまった。この「事故物件」を買ったのが韓国に来たばかりのドイツ人という設定もおもしろい。息子と父が伝言をかわすことができるという設定がやや希望につながるというラストはかろうじて納得できる。
『万引き家族』よりは楽しめた。
(参考)