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L'art de croire             竹下節子ブログ

『最高の花婿』第三作《QU'EST-CE QU'ON A TOUS FAIT AU BON DIEU ? (みんなでまた神様に何をしたって言うんだ?)》

2014 年の大ヒット映画の続編のまた続編が公開された。
フランスでもwokismロビーがはびこる中で新たに「フランス」ならではのレジスタンスを感じた。モントリオールから帰った次の日に観たので、フランス語が全部聞き取れるのもほっとするし、あらためて、フランスでしかあり得ない映画だと思った。

続編の記事をリンクする。そこから第一作の記事にも目を通してほしい。



今回の予告編はこれ。

4人の娘の家族を自分の住む町に住まわせることにめでたく成功したブルジョワ夫婦だが、毎日町で婿たちに遭遇することにストレスを感じている。
アラブ系婿とユダヤ人の婿は庭を接する隣同士になっていて問題が絶えない。
中国人と結婚している画家の娘は、動物を殺すことに反対のヴィーガンで、屠殺場の残酷さを訴えるために血なまぐさい絵ばかりを描いている。
役者である黒人の婿は前回はオセロの役となっていたが今回はイエスの役、象牙海岸から来た両親は、エジプトから来たイエスはアフリカの地が入っている、黒人だ、などと言って満足している。
で、今回は、ブルジョワ夫婦の結婚40年記念に、娘たちがそれぞれの夫の両親を招くようにと夫たちに言う。両親との仲が悪い夫や両親が離婚寸前の険悪な関係の夫もいて複雑だ。
そこに、金髪碧眼で、絵画の有名なコレクターでロワールの城に住むドイツ人ヘルムートが登場し、画家の娘の個展に来て、絵を買いたいと言い、NYでの個展の話も持ちかける。実は彼が一目ぼれしたのは母のマリーの方だった、というドタバタ。
アルジェリアからやってくるラシッドの父は昔のロックバンドの仲間を呼び寄せて、ロックコンサートを披露する。中国人の母はアル中、みんな火種を抱えている。

カトリックのミサのまじめさを皮肉ったり、教会の前には黒人がイエスの役を演じるのを反対するグループが集まっている。いつも通りレイシズムや宗教批判やらが満載。
娘が中国人と離婚してドイツ人のヘルムート(しかもカトリック)と結ばれることをひそかに期待する父。
そういうドタバタの最後にいつものように、しんみりさせられるハッピーエンドが待っている。最後の歌が、ダビッド・アリディーが父のジョニー・アリディーに贈った『Sang pour sang』(「100%」と「血のつながり」をかけている)で、歌詞がぐっとくる。

今回、ケベックから帰ったところだったせいであらためてこの映画の特殊性に驚かされた。ベトナム難民ルーツのケベックの友人たちからぜひ見にいくように言われたのだ。もちろん、こんなにポリコレからかけ離れた映画はアメリカでは上映禁止の場所もあった。人種の坩堝のケベックだから受け入れられるのだろう。

今の世界で、ここまで人種や文化への偏見を丸出しにしたりカリカチュアライズしながら、笑わせて落としどころを見つけるなんて、リスキーである以上に実は非常に深い洞察を必要とする名人芸だとあらためて思う。
もちろん細部に怒る人はいくらでもいるわけだけれど、このオーケストレーションは全体としてすばらしい。脚本についてさぞや工夫、推敲が重ねられたのだろう。

でも、このリメイクをアングロサクソンの国ですればまったく違う方向になるだろうし、イタリアやスペインや日本などでも想像できない。(今回、この映画は『最高の花婿』『最高の花婿アンコール』というタイトルで日本でも上映されていたことを知った。「神さま」という言葉がよく会っているのだけれど)どうみられるまだろう。

ユダヤ、アラブ、黒人(息子夫婦がインドの孤児を養子にしたことに父は一瞬起こる)、中国人への差別と偏見だけでなく、カトリック教会やブルジョワ信者への偏見、ドイツ人をまるで色恋好きのフランス人のようなキャラにして笑いとばすところ、片腕のない障害を抱えた気球操縦士への笑い、ヴィーガンへの皮肉など、バラエティに富んでいて、だから全部が薄まる、というわけでもなく、妙に地に足がついているのもうまい。この映画の前作はドイツでもヒットして、「ムッシュー・クロード(父親の名)」は古い頭のブルジョワとしてフランス人の代名詞になったほどだという。今回のヘルムートはどうみられるのだろう。
これがもし4人の息子がそれぞれに外国ルーツの妻を連れてくるという設定なら、この微妙な綱渡りは不可能だっただろう。そして人種や文化に関わらず、どの夫婦も「妻」たちがイニシアティヴをとって、全体を丸く収めようとする設定も必要不可欠となっている。正直言って、「戦争回避」の秘訣について考えさせられる。
あらゆる点で「フランス」的で、表層的なお笑いの下に、「表現の自由」論争への一つの答えが組み込まれている。映画としての出来以上に、今の時代にこの発想を実現させることに感心する。
前作の繰り返しでマンネリという厳しい批評もあるけれど、この数年でMeTooやBLMやwokismが加速したことを思うとマンネリというより冒険だ。

うまい、本当にうまい、こういう映画が創られて、楽しむ人たちがいるフランスに希望が持てる、と思わせてもらえた。





by mariastella | 2022-06-11 00:05 | 映画
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