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L'art de croire             竹下節子ブログ

閑話挿入  元首相の死と「宗教団体」について

日本の元首相の死亡から1週間を過ぎた頃、衝撃の中からようやくいろいろな言説が立ち上がってきた。

どこから見るか、という視座によってまったく別の部分に光が当たって気づかされるというのは知的な刺激を与えられて興味深い。中国との関係から見たこういう記事があった。


元首相の日中外交のプラス面が語られている。結論は次のようなものだ。

 >>>アジアを、高みから見下す視線は日本の近代化初期から戦後を経ても変わっていない。しかし日本(人)のアイデンティティが、「G7」の先進国メンバーという「名誉白人」的虚像にあるとすれば、アジア諸国に映る「中国に次ぐ二番手」という他者イメージとの落差は開く一方だ。この自他認識のギャップを埋めないと、アジアでの対中抑止や包囲戦略は成功しない。同時に、成長著しいアジアの中で、日本再生の手掛かりをつかむチャンスも逃すことになる。<<<


藤永茂さんもようやく発信してくれていた。


で、私に関しては、この事件に関する「宗教」についてのコメントを複数の方から求められたのだけれど、それについては今のところ書くつもりがない。


なぜなら、当該の「宗教団体」を含めて、日本で「新宗教」や「新・新宗教」と呼ばれるような団体について、今回あらためて振り返ると、そのうちの10団体ほどと多少の関係があったからだ。

その宗教団体の関係者からのコンタクト、「信者」からの接触、「宗教抜き」の文化面での関係、など様々にわたる。それは1980年代から始まっていた。フランスにいる日本人からも相談を受けた。日本にいる宗教学者とも話し合った。その後、「オウム真理教事件」が起こり、それに関しても個人的な相談をされたり意見を求められたりした。


その後、ある「カルト宗教」を念頭に文春新書で『カルトか宗教か』を出版した。このことによってまた特定宗教から個人的に注目されるようになった。その後、日本では一番リスクが少ないかと思われる「カルト」についてNHKのドキュメンタリー番組作成に協力を依頼されたが、内部からの圧力があって実現しなかった。根の深さに驚いたことがある。


そんなわけで、誤解を招くのも嫌だし、これ以上監視されるのも嫌だし、リスク管理もあって、当分この件についてはコメントしないつもりなのでご理解願いたい。(私がすでに特定宗教からチェックされていることを知らせてくれた人もいる。)


「宗教」というか、「救い」を求める人々の心や、「共同体」の一員として承認されたいという心はかなり普遍的なものだろう。だからこそ、その心を利用する一部の「宗教」、「カルト」、「ロビー」というのは至る所にある。そのリスク査定は難しいが、まず、予防策としては、「神仏」を必要とする人は、「現存の生身の教祖を拝む」宗教や団体を避けること、無難なところではその地域で歴史の長い「老舗宗教」の中で信頼できる人を見つけることだ。日本で言えば、鎌倉時代以前の仏教宗派とか地域神社、フランスならカトリック教会や17世紀以前のプロテスタントなどだ。自分の収入と釣り合わない会費や献金を要求されないというのも大切なポイントだし、未成年の子供を「布教」に使っているかどうかというのもチェックする必要がある。

安倍氏に関しては、こういう亡くなり方をしたことで、いわゆる「モリ・カケ・サクラetcが生んだ深刻な問題はどうなるのか、と思うとともに、確かに、それらのスキャンダルのせいで、その裏で展開していたさらに深刻な問題についての評価にもすべてバイアスがかかっていたかもしれない、と見直す必要があるかもしれない。

「モリ・カケ・サクラ」について、前にも書いたことがあるけれど、「権力者」には絶対にタブーであるべきさまざまな「特別待遇」やら「忖度」も、「普通の人」の生活では「普通」の処世術の範疇かなあとも思ったことがある。「権力勾配」のあるところ、しかも、民主主義国の政権内では決してあってはならないことでも、個人の生活では「つて」や「コネ」を頼るのは生存戦略の範疇である場合が多い。

たとえば治療が困難そうな病を得た時、どこの誰が自分にとって最良の医療者かを知るために「つて」や「コネ」を頼るのはごく普通だ。私自身もいろいろな局面で、「誰を頼るべきか」の選択について「つて」や「コネ」にいつも助けられてきた。いわゆる「一見さん」を警戒することも学んできた。


一人では「つて」も「コネ」もない人、家族共同体が機能していない人らが、組合やら政党やら各種団体(フリーメイスンから宗教まで)に頼るのも自然な心理であり実用的な選択であることもある。問題はその団体と自分の個人としての尊厳との間に適正距離を保ち続けることができるか、敵味方、善悪二元論的なレトリックに洗脳されないか、という判断なのだけれど、すでに心が弱っている人にとっては決してやさしくはない。権力者への依存関係に陥ったり、身近な家族関係を崩壊させたり、社会的な不義、不正(汚職も含めて)に手をそめたりと、深みにはまっていく。強さを志向することと弱さを学ぶことは別物だ。

生存戦略としての「つて」「コネ」の発動と、権益獲得のためのそれとはまったく別物だということも心得なければならない。「公僕」、「上に立つものが最もおのれを低くして仕える」という原則は、あらゆる文化にいろいろな形で表現されてきた。


難しい。


「謙虚」と「堕落」を分けるのは、実は紙一重なのかもしれない。


by mariastella | 2022-07-19 00:05 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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