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L'art de croire             竹下節子ブログ

コロナ禍と観光と貧困

(この記事は数時間アップされていた記事を差し替えたものです。予定稿の中にメモが混ざっていたのがそのままになっていました。予定稿がずっと先まであって、しかも読み返していないのですみません。今三つの仕事を並行してやっています。新学期になってレッスンや練習が始まる前にいろいろやることがあるので)

8/9、Arteのドキュメンタリーで、タイで観光用に虐待される象を救う活動をしている女性のドキュメンタリーを視聴した。




象に芸をさせるだけではなく背に人を乗せるだけでこんなに虐待が必要なのだと知ってショックだったし、子象を売るには、母親象や周りの象も皆殺しにするのだというのも衝撃的だった。私は2008年末にバリ島で過ごした時にタイから来たという象の背中に乗らなかっただろうか。よく覚えていない。

子象に寄り添って歌を歌うと子象がいびきをかいて寝てしまうシーンもすてきだけれど、このドキュメンタリーで一番印象的だったのは、コロナ禍の前からずっと撮影されていることだ。その劇的な変化が分かる。

近頃視聴するドキュメンタリーのほとんどは、コロナ禍の以前に撮影、編集されたものだ。もちろんコロナ禍での医療事情だののドキュメンタリーは見たことがあるし、世界中の観光地から人が消えた印象的な映像もよく目にした。

でもそれらはむしろ、医療現場などを除けば、非現実的だけれどおとぎ話のような面があった。車がまったくなくて、道路に動物が出てきたり、排気ガスがなくなって空気が澄むとか、動物園の動物たちがゆったり過ごすとか、ベネティアの運河が透き通るとかいうものだ。
コロナを恐れるのは人間だけど、「自然環境」の変化については全体としてなんだかユートピア風に語られていたものもあった。

ところがこのドキュメンタリー、象たちの保護区を作って、観光客にはただ見てもらうというやり方で活動していた女性が、コロナ禍によって、自分の保護する象たちだけではなく、全ての象の危機を思い、どこまで向き合えるかという悲痛なものだ。
(彼女には発信力もあり、ドキュメンタリー撮影をはじめたように動物保護団体へのコネもあるので、少しでも他の象も救おうとするのだ)

人間に搾取されていた象たちが「故郷」へ帰っても、もうそこも人間に破壊されて住めるような環境ではないし、象を使った数々のアトラクションパークは、観光客ゼロが1年以上続く中で、象だけでなく人間も飢えるしかない現実がある。

戦争地域で爆撃を受けた動物園などとはちがって、コロナ禍の動物はむしろのびのび、というイメージは覆された。

人も動物も飢え、ストレスにさらされ、生きるか死ぬかに追いやられる。

フランスの外出規制の間、自宅でネコたちとまったりしていながら不平不満を繰り出していた自分のことが思い出される。

動物を虐待して「カネ」を得る現場で実際に働いている人たちは、彼ら自身が、その日暮らしで何の保証もなく搾取されているというのが実態なのだ。

野生でのびのびという動物もいたかもしれないけれど、虐待されていたような動物の多くは、「カネ」が回らなくなると、見捨てられる。

コロナ禍での閉鎖環境で家庭内暴力などが増えた、というのは知っていたけれど、共倒れで飢えて死んだりコロナ以外の病気や事故で死んだ子供も動物もたくさんいるのだろう。

インバウンド経済を拡大して回そうとしていたはずなのに、コロナ禍でほぼ鎖国政策をとったまま無観客オリンピックまで開催した日本のような国は、なんだかんだいっても恵まれているのだ、と再認識した。

このドキュメンタリーの救いは、コロナ禍によって、今まで敵同士だった、象観光パークの持ち主と象を保護するヒロインとが、共通の危機の前で新しい道を模索する姿勢をうかがわせるところで終わっていることだ。

コロナ禍を振り返る時に別の現実を提供してくれるという意味で私にとって貴重なドキュメンタリーだった。


by mariastella | 2022-08-19 03:24 | 自然
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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