夏のバカンス中に読む日本語本のもう一つだったマイケル・コナリーの『汚名』。
読んだのはやっと夏の終わりだった。
うーん、また刑事もので、あまり私に向いていなかったかも。
このシリーズはもう何十年も続いていて、TVのシリーズものも配信されているそうなのだけれど、私はTVドラマは見ないし、このシリーズもこれが初めてで人間関係がはじめはよく分からなかった。
ハードボイルドは好みでないと思っていたのだけれど、リーガル・ミステリーとも書いてあったので、読んでみたのだけれど、法廷シーンでどんでん返しがあるわけではない。
過去と現在のふたつの事件が並行しているので何かつながりが出てくるのかというとそうでもない。
潜入捜査の部分は確かにスリリングで手に汗握るのだけど、別に特に読みたいものでもない。
主人公のハリーが65歳以上の老刑事で、えらく人間味のある正義感の持ち主だというのは好感度大だけれど、何が一番違和感があったかというと、現代アメリカだ。
夏に読んだもう一冊はイギリスが舞台だった。それでも、21世紀のテクノロジーを駆使した捜査に驚いたけれど、アメリカって、また全然別だ。
州によっていろいろな違う法律のシステムがあるし、広大だし、砂漠に露営地があっても見つからなかったり、何の監視も受けないスカイダイビング用の空港があったりする。
それに、ベルラーシのミンスク生まれでロシアの刑務所で知り合った麻薬マフィアの下っ端がアメリカに不法滞在して犯罪を犯すとか、オバマのメディケアにつけこんでの麻薬中毒者の囲い込みとか、その他いろいろ、日本やヨーロッパと違い過ぎる。フェイクニュースや陰謀論やスパイ活動の巣靴となるのも不思議ではない。
まあSFでもディズニーアニメでも、その世界に入り込んで楽しめるのだから、現実感がなくてもいいわけだけれど、やはり20世紀半ばの古いタイプのミステリーになじんできた感覚から言うと、グローバリゼーションなどといいながら、21世紀になってからアメリカの特異性がますます際立ってきたのではないかという気がする。
こういう移民社会、モザイク社会、格差社会って、マフィア型巨悪の巣になり、この本にあるように、一つの事件の実行犯を叩いたところでインターナショナルな「巨悪のシステム」は健在で、変わらない、という弱肉強食の絶望感がある。
10月末には3年ぶりに日本の書店に行けるから、棚を見ながらフィーリングに合いそうなミステリーをいろいろ買ってこようと思う。本との「出会い」だって、デジタル情報を通すよりリアルに惹かれる何かが一番期待できる。