『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』『ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日』 動物ものが好きなので数年前の封切時にも観たかったけれど観ていないままにコロナ禍が始った。
今回テレビ放映を観たのだけれど、その後で続いて放映された撮影ドキュメンタリーが、本編といえるほど長く、本篇よりおもしろかったので、全部で3時間以上もTV画面に釘付けになった。 ドキュメンタリーはこれ。
うーん、まず、猫好き、特に猫飼いには絶対お勧め。 うちの2匹の猫ズと一緒に視聴したのだけれど、思わず顎を撫でたりモフモフしたりして、「ほーら私もライオンとなかよし」という満足感、制御できない「野生」と暮らしているというワイルドな興奮、それなのに、見終わったら実はなんだか、うちの子たちが少し怖くもなった。 それでも、その後で遅くなった夜食をあげる時に、いつも通り「お座り」「お手」や、「伏せ」「コロン」「ニャン」(ニャンと言いながら1回転する)をルーティーンとしてこなす猫ズ。 いつも思い出すのは「猫を飼う喜びは猛獣を愛撫する喜び」というユゴーの言葉。 この映画では白ライオンが2頭用意された。そのうちの1頭トールはより神経質だった。 神経質で怖がりのトールは人間の不安や警戒もすぐにキャッチする。
うちの子ではイズー君がそうで、ナル君より大きく強いのにチキンで警戒心が強いから、はじめての人に触られるとひっかく恐れがある。だからそう警告すると、その人はますます恐る恐るとなるからさらにイズーのストレスを高めてしまう。 けれども腹を出して寝ているところに私が来て足を顔や腹にあてても寝たまま。触り放題。 猫それぞれに性格が違う。それを理解するのが必要だ。 ライオンも同じ。 ライオンも相手を「種」として見ているのではない。1トンの水牛を倒せるライオンだが、牛と一緒に育てたら、その牛は「食べ物」でなく「友」であって、絶対に襲うことはない。でもそこに他の知らない牛が迷い込んだら平気で襲う。 「共生」には、生身の関係性が必要で、そのベースにはまた、相互リスペクトが必要だ。 (それなのに、人間社会ですら、金持ちが逃げ込むゲイテッドシティ、貧困者を囲い込むゲットーなど「関係性」も「リスペクト」も無視した構造がここかしこに存在する。)
ドキュメンタリーでは、奇跡の動物行動学者のケビン・リチャードソンが、撮影のない時も週3回ライオンに会いに来ていた2人の子供(ミア役とミック役)に与えるアドバイスが満載で興味深い。
「奇跡」は子供を3年間ライオンの傍で過ごさせることを了承した二組の両親が存在したことだ、とケビンは言っている。 とにかくライオンに絶対にストレスを与えないというのがケビンの条件で、子役の両親の交通費や滞在費に至るまで潤沢に支払われた。子供たちにはライオンの檻の掃除や食料の準備まで体験させた。3年に渡る撮影なので、フランス人監督の発案と原作だけれど、多国籍映画になっている。(ミアの子役はフランス系の苗字だし、ミアの母役が逞しくもなく日焼けもしていず、この手のアフリカン映画に合わないようなフランス女優のメラニー・ローランというのも、逆説的にリアリティを与えているかもしれない。) ともかく、コスパの世界を無私した贅沢さというか、情熱と使命感の映画なのだ。 南アフリカの「缶詰狩り」、トロフィーハンティングという合法的な観光産業のおぞましさを告発する意図もある。映画の中には中国資本のショッピングモールも登場するが、そのことも含めて、地球規模の環境問題につながる「アフリカ」の闇を前に震撼とさせられる。
ケビンが付き添っているとはいっても、子供たちが、じゃれるライオンにとびかかられて小さい傷を負ったり、一瞬の恐怖に捕らえられたりしたこともある。そんな時はケビンがとことんその原因と対策を子供たちと話し合う。 ライオンに手を近づける時は手の甲を近づけること、手のひらだと向こうは捕まえられると警戒するから、肩に前足をかけられたときは、振り払おうとせずにそのまましゃがみこむこと、対等な関係を保つためのバランスをとること、一度でも相手をあなどると関係は破綻する、など、やはり猫にも通ずるものがある。 監督も、最初はライオンの傍にいたのだが、撮影再開のために成長したライオンの傍に数ヶ月ぶりで近づいた時、一瞬の恐れと逡巡があり、それを察したライオンに軽く咬まれた。それを見たケビンは、「もう絶対に信頼は回復しないから決して近づかないように」と申し渡した。
ケビンは、サーカスのライオンが芸をするのは猛獣使いを「怖がって」いるからだという。 ケビンは徹底的に「遊ぶ」。たてがみを震わせる巨大なライオンたちとケビンとがじゃれあう時に醸し出す「至福感」は圧倒的だけれど、猫飼いならその幸せの秘密を知っている。それは「信頼してもらっている」という喜びだ。階段でなどでたまに踏んづけるアクシデントはあっても、それはアクシデントだからこちらに悪意はもちろん警戒の「気配」もないから、信頼は揺らがない。
「猫のサーカス」というのがあったが、あれは。猫のやりたいこと、遊びたがっていることを用意して、遊ぶ気満々の猫を抑えていて、いいころ合いに「放してやる」ので成立しているというのを読んだこともある。 人間など、同じ「種」なのに、「人種」など見た目だけで差別したり、能力や財力で差別したり、相互リスペクトなどみじんもない強権システムが横行する社会を築いている世界の実態についてもあらためて考えさせられた。
by mariastella
| 2022-10-31 00:05
| 映画
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